最近よく聞く「CVC」って? 仕組みや活用方法を解説 オープンイノベーションの相手を探す手段になる訳(3/3 ページ)
オープンイノベーションに取り組む際、その相手を効率的に探すためにベンチャーキャピタル(VC)の仕組みを活用する方法がある。記事ではVCの活用方法を4つに分類して解説する。
3. CVC:社内の資金プールから直接投資
既存VCへのLP投資や二人組合は、基本的にファンドの運用とベンチャー案件のソーシング(案件の発掘)は外部に委託する。しかしCVCの本来的な意味では出資や資金の運用、案件のソーシングなどを自前でやるものだ。ただ、その方法も二通り考えられる。一つは自社からベンチャー企業に直接投資する方法、もう一つは子会社のCVCを設立する方法だ。
ここでは、直接投資する方法について説明する。この形態では、自社がベンチャー投資のために一定の金額を一定の期間コミットし、新規事業の投資担当が案件をソーシングして、投資の意思決定もポートフォリオマネジメントも自社で行う。ファンドは作らず、投資のための資金も自社のみで拠出するが、外に対しては「CVCをやっています」という看板を掲げるケースが多い。こうすることで、事業会社であってもVC業界の一員としてベンチャーエコシステムの中で活動しやすくなる。
事業会社がするべきは、ベンチャーキャピタルの運用経験を持った人材を外から連れてくるか、最初はLP投資や二人組合などを通してベンチャー投資をできる人材の育成だ。
4. CVC:自社で子会社VCを設立
自前でCVCに取り組むもう一つの方法は、事業会社がVC子会社を作り、本社が100%出資して運用するという形態だ。この場合、VC子会社は基本的に外部の独立系VCと同じような振る舞いをする。その場合、VC子会社の達成目標はフィナンシャルリターンの最大化だ。事業会社は自社の戦略目標を達成するためにVC子会社のファンドから出てくる案件を検討し、戦略リターンを最大化する。事業会社とVC子会社で何を優先するか調整してからファンドを運用するのも合理的な手段だ。
この形態では、事業会社にとってVC子会社とファンドは「自社のファンド」という位置付けだが、VC子会社はベンチャーキャピタル業界の中で立派に独立系のVCとして振る舞う。すると、最初のファンドは親会社の意向に沿う運用をしつつ、次のファンドでは他の会社からも資金を集めるといったように独立志向が強まる可能性もあある。その場合、もともとの事業会社は複数のLPの一社という位置付けになりかねない。
この形態をとるCVCの例としては、NECが98年にシリコンバレーで作ったConvergence Partnersがある。その他、アステラス製薬が99年にシリコンバレーでAstellas Venture Management LLC(AVM)を設立している。
連載4回を通して、オープンイノベーションの重要性を振り替える
ここまで、オープンイノベーションの相手を探す手だてとしてのVCおよびCVCの活用について解説してきた。
連載1回目でも述べたように、外的事業環境が急速に変化す中、オープンイノベーションは成長戦略に取り組む上での基本的な要素と位置付ける必要がある。
しかし連載2回目で解説したように、全てがうまくいくわけではなく、多くの失敗例もある。そして、連載3回目で説明したように、オープンイノベーションを成功に導くためには、そのあるべき姿に対する正しい理解、適切なリスクマネジメント、適切な組織体制の構築が必要だ。
さらに、今回説明したように、オープンイノベーションの相手を探すための「仕組み」としてVCやCVCを活用するには、VCに関する知見も必要になる。
つまり、オープンイノベーションを成功させるためには、トップマネジメントのコミットメントのもとに、社内のあらゆる部門を巻き込み、場合によっては新事業創出のための新しい部門を創設するなどして、上に述べたような全社的な取り組みとして推進していくことが必須といえる。
冒頭にも述べたように、いまオープンイノベーションはどの企業にとっても必要と言っても過言ではない。将来の大きな成長を目指す企業は、オープンイノベーションの意義と方法論を理解し、ぜひ真剣に取り組んでほしい。
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