「政策として合理性なし」 BDレコーダーを録画補償金の対象とする文化庁の改正案にJEITAが猛反発
JEITAは23日、私的録音録画補償金制度の対象機器としてBlu-ray Discレコーダーを追加するとした文化庁の政令案に反対意見を示した。「政策としての合理性がない」と強い調子で批判している。
JEITA(電子情報技術産業協会)は8月23日、私的録音録画補償金制度の対象機器としてBlu-ray Discレコーダーを追加するとした文化庁の政令案に反対意見を示した。「政策としての合理性がない」と強い調子で批判している。
JEITAは反対する理由として、1)政令案に機器を追加する合理的理由が示されていない、2)レコーダーにDRM技術(著作権保護技術、ここではダビング10を指す)が搭載されていることが全く考慮されていない、3)政令案の決定に至るプロセスが不透明、を挙げた。
私的録音録画補償金は、著作物のデジタルコピーで権利者に生じた損害を補償する制度で、対象機器や記録媒体の価格に上乗せする形で消費者が負担する。1990年代に始まり、2005年に権利者団体が「iPod」やレコーダーを対象機器に含めるよう求めたことで広く知られるようになった。
以来、権利者団体と機器メーカーの意見を代弁するJEITAはたびたび衝突。デジタル放送録画のコピー回数をコントロールするDRM技術「ダビング10」ができるとJEITAは「DRMでコンテンツを管理できる時代に私的録音録画補償金は本当に必要か」と疑問を投げかけ、2009年にはパナソニックと東芝が録音録画補償金の支払いを拒否している。
補償金を管理するSARVH(私的録画補償金管理協会)は東芝に賠償を求める訴訟を起こしたが、12年11月に東芝の勝訴が確定。以来10年間、補償金の対象はなく制度は事実上機能を停止していた。
JEITAによると、当時の裁判では1)機器を新たな補償金の対象とするには関係者間(メーカーと権利者)の合意が必要、2)DRMの存在は補償金の対象とするか否かにおいて大きな要素と認定されたという。
JEITAはこうした経緯を踏まえ、今回の政令案について「司法判断が蔑ろにされ、関係者の合意を前提とした制度運用も歪められるような不透明なプロセスで進んだ」と指摘。「ダビング10によるコピー制御(DRM)があってもなお、同じ補償金が課される事態になれば、今後様々な機器やサービスに拡大するリスクがある」と懸念を表明している。
関連記事
- 「補償金制度が機能しないのは異常事態」──権利者団体が声明、「ユーザーと権利者の利益調整に取り組む」
「Culture First」を掲げる権利者側の86団体は、「録音録画補償金制度がほぼ機能していない」とし、補償金制度が担っていた「ユーザーの利便性とクリエイターの保護を調整する仕組み」を修復すべ「強い仕組みで取り組む」と発表した。 - ついに「ガラスの城」が壊れ始めた録音録画補償金制度
「デジタル専用レコーダーは対象外」として、東芝が支払わなかったことで話題となった私的録画補償金。一体何が問題なのか。 - 「課金対象か明確でない」――パナソニックと東芝、デジタル専用レコーダーに補償金上乗せせず
パナソニックと東芝が、デジタル放送録画専用のDVDレコーダーの価格に、録画補償金を上乗せしていないことが分かった。 - 「ダビング10を人質になどしていない」「メーカーは“ちゃぶ台返し”だ」 権利者団体が会見
「権利者はダビング10を人質になどしていない」「メーカーの主張は“ちゃぶ台返し”だ」――私的録音録画補償金をめぐるJEITAの態度を権利者が批判した。 - 「DRMあれば録音録画補償金は不要では」――JEITAが立場を説明
JEITAが録音録画補償金制度に反対する立場を改めて表明した。「DRMがあるのに補償金まで取られるのはおかしい」などと主張。一般ユーザーを巻き込み、国民的な議論に盛り上げていきたいという。 - 補償金額はどう決めるべきか 私的録音録画小委員会
私的録音録画補償金制度の見直しを検討する委員会の会合が開かれ、DRMが施された機器などの補償金額の決定方法について話し合われた。 - 私的録音・録画補償金制度では誰も幸せになれない
固定メディア型の音楽プレーヤーやHDDレコーダー、果てはPC用HDDからも私的録音補償金制度の対象とすべき、という議論が持ち上がっている。だが、果たしてそんな主張に正当性があるものだろうか。いや、そもそもメーカーや著作権者に幸福をもたらすものなのだろうか?
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.