“コピーロボット”の働きが声優の収益に AIシンガー業界に到来したサブスクビジネスの可能性(2/2 ページ)
テクノスピーチが音声合成業界でサブスクリプションサービスを始める。自分の分身である音声合成ソフトが利用されると自分に収益が帰ってくる仕組みが現実的になる。
サブスク未経験業界における値付けの難しさ
料金設定やプラン構造については、社内でかなり議論したという。
「音楽制作ソフトの相場を考えると、1カ月数千円、年間数万円だと難しいだろうと思いました。2〜3年使って買い切りソフトと同じくらいの価格になるイメージがバランスがいいかなということで、年額6600円に設定しています」(徳田教授)
「先に年額プランの価格が決まったんですが、月額プランを用意するかどうかについては社内でも意見が割れました。年額プランの価格は事前にユーザーに向けても情報を出して反応を探りました」(塚田さん)
いわゆる“ボカロP”として活動している人々は、歌声合成ソフトのサブスクリプションサービスを経験したことがほとんどないため、どのような使われ方をするのかは未知数な部分があるという。
月額プランであれば、さまざまなAIシンガーを試しに使ってみるという使い方ができる。楽曲を作るときだけ契約するという使い方もできる。一方、その分演者に還元できる収益が減ってしまう恐れがある。
今後、新製品を追加していった場合には、全てのAIシンガーを使い放題になるセットプランも検討はしているが、これも収益減になる可能性があるため、ユーザーの反応を見ながら慎重に判断していくとしている。
コピーロボットが作ったコンテンツを自分に還元
冒頭で紹介したCeVIOブランドの「可不」は、演者である花譜さんとは別のルートでファンを増やしている。
可不は何十人ものボカロPがオリジナル曲のボーカルに採用している。花譜さんはライブで可不の曲を歌ったり、一緒にデュエットしたりと、可不の資源を活用している。可不の活動によりボカロPのファンなどに花譜さんのファン層が広がっている部分もある。
「かつて、VOCALOIDの『初音ミク』が成功したときに、音声合成は演者の敵じゃないか、初音ミクの稼ぎは演者に還元されていないんじゃないかという声がありました。テクノスピーチが声優事務所などに話を持って行っても当時は警戒されました」(徳田教授)
「そういったときには演奏家とレコードの関係を例に説明していました。レコードが登場したとき、演奏家はコンサートに人が来なくなるんじゃないかと反対したらしいです。実際はレコードから収益を得たり、コンサートへの集客につながったりと双方にメリットがありました。音声合成と演者もそういうWin-Winの関係になれるんじゃないかと思っています」(徳田教授)
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