独立したての日本人デザイナー、NFTで6000点完売 カズシフジイと“コラージュ”の潮流(4/4 ページ)
アート×NFTの中でも新たなトレンドとなっている「コラージュアート」。この領域でいま注目を浴びているのがカズシフジイ。これまでに6000点以上のNFT作品が売れたという。カズシフジイがどのように道を切り拓いたのか、その足跡を追う。
彼自身の作品もNFT界隈で影響力を持つインフルエンサー、Benit0 RTFKT(ベノワ・パゴット)が作品を買ってくれたことで注目を集め瞬間的に世界ランキング172位になった経緯がある。Benit0 RTFKTは、アーティストの村上隆氏やNikeと組んで「Clone X」というNFTコレクションを作ったことでも知られている人物だ。
Photoshopの“ある機能”がNFT作品の価値を上げるか
アドビのコンペで名声を得て会社から独立。コンペで初めて挑戦した「コラージュアート」というジャンルの先導者に自らなり、ソーシャルメディアでコミュニティーを作り、新たな仕事を獲得しつつも新たな収益源となるNFTも自ら開拓。独立後、カズシフジイは、まさにアドビのツールと複数のソーシャルメディア、そして最新テクノロジートレンドをうまく活用して新しい道を切り拓き続けた。
そんなカズシフジイは、これからもNFTを手掛けていく上でPhotoshopのある機能に期待を寄せている。
「NFT自体がまだ新しい分野なので、本当の評価を下すのはもう少し先かなとは思うのですが、例えば新しいPhotoshopでは作品の制作過程などを逐一記録し、それらの情報をNFTとして書き出す、という機能が追加されています。こういう機能がつくことで、そのデータがコピーでなく、本物であることがハッキリするので作品に価値がつきやすくなると期待しています」
NFTがデジタル作品の盗用を防ぐ上で大きな意味を持つと考えるアドビは、750社が参画する「Content Authenticity Initiative」という団体を作った。フェイク情報などへの対策といった意味も込め、ネット上のコンテンツの真贋を見極められるように働きかけている。
例えばTwitterなどのソーシャルメディアに投稿されたNFT作品でも、それがオリジナルかコピーか、知らないところで加工が加わっていないかなどが簡単に調べられるようになる予定だ。これに伴い新しいPhotoshopでは、元となる写真にどのような加工を加えたかを逐一記録して表示させる機能も組み込まれる。
「今のNFTはあまりにも潮流の変化が激しく、流れについていくのがやっと。しかし、クリエイターのビジネスチャンスとして非常に夢があるので、今後もNFT市場の活況が続いてほしい」
Web3で自らの成功体験を周囲へ 障害者支援にも
そんなカズシフジイのNFTやWeb3といったトレンドへの期待は、何も自分の利益だけのためではない。最近、他のまだ人気が出ていないクリエイターや、病気や障害で仕事がない人たちのNFT販売を支援しようというプロジェクトも進めている。
「Web3のキーワードの一つであるDAO(分散型自律組織)でチームを作っているのでそれを使ってより大きなプロジェクトを進めたい」という夢もあれば、「これまでNFT作品が売れていなかったクリエイターを支援したい」という夢もある。
もう一つ最近力を入れているのが、うつ病や自閉症を含め障害などがある人々にNFT作品を制作してもらい、NFTアートコレクション「Kawaii Girl Collage Eureka」として販売することで支援するプロジェクトだ。
ベースとなるイラストなどをカズシフジイの側が用意し、それをアレンジしてもらう形で作品を作ってもらう。作品には自分でタイトルをつけてもらい、その作品への想いなども綴ってもらう。既に100点以上の作品が作られ、40点以上が売れているという。
最新テクノロジーを活用して、会社独立後の道を自ら切り拓いてきたカズシフジイだが、今度はその恩恵を周囲の人々の道を切り開くために活用を広げていくようだ。
Twitter、Instagram、Behance、OpenSea、YouTubeといったソーシャルメディアをうまく活用し、それぞれのチャンネルを使って全く異なる発信をしていることもカズシフジイの大きな特徴の一つだろう。「どうもうまくソーシャルメディアを活用できていない」と感じるクリエイターの方々は参考にしてみるといいかもしれない。
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