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Jアラートの音はなぜあんなに不快なのか 分析してみた 隅々まで設計された音の秘密(1/2 ページ)

10月4日朝に北朝鮮から弾道ミサイルが発射され、政府がJアラートで警戒を促した。Twitterでは「Jアラートの音怖い」「ドキッとしてしまう」「気持ち悪い」といった反応が見られた。このような警戒音は緊張感などを演出するためかなり作りこまれたデザインになっている。

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 10月4日午前7時22ごろ、北朝鮮から弾道ミサイルが発射され、政府は全国瞬時警報システム(Jアラート)で警戒を促した。地震発生時の警戒音はたまに聞くことがあるが、ミサイル発射時の音は聞くことも少なく、驚いた人が多いだろう。

 Twitterでは「Jアラートの音怖い」「ドキッとしてしまう」「気持ち悪い」といった反応が見られた。

 消防庁の説明によるとJアラートは「対処に時間的余裕のない事態に関する情報を緊急速報メール、防災行政無線などにより、国から住民まで瞬時に伝達するシステム」のこと。聞く人をドキッとさせるのは当然の仕様ともいえる。

 今回は、Jアラートなどで使われる音がどのように不快さを演出しているのかを音楽的な視点から分析してみた。

 本記事は警戒音のサンプル音声が複数を掲載するため、音声再生時は周囲への配慮や、心理的負担を軽減する工夫をすることをおすすめする。

「国民保護サイレン」 不協和音+不明瞭な音程

 今回の弾道ミサイル発射で発信されたのは「国民保護サイレン音」と呼ばれる音。内閣官房「国民保護ポータルサイト」によると「武力攻撃が迫り、又は現に武力攻撃が発生したと認められる地域に当該市町村が含まれる場合には、原則としてサイレンを使用」するという。

サンプル試聴ページ

 この音は2音が合わさって鳴っている。音を複数同時に鳴らすと「和音」になる。国民保護サイレン音はドとレのような「長2度」の和音になっている。他の構成音次第では美しくもなるが、この2つだけなら不協和音に聞こえる人の人が多いだろう。

 加えて、聞いても分かるように国民保護サイレン音はピアノのようにはっきりとした音階には分かれていない。音程が徐々に推移するようになっており、不安定に聞こえる。

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国民保護サイレンの周波数成分。300Hz周辺の音が基音で、1000Hz周辺の音は3倍音。この2つは不協和音ではない。

 このサイレンに含まれる音の中で最もよく聞こえる音は約800Hz〜1200Hz程度の高さ。中央のドの1.5オクターブ上のソから2オクターブ以上上のミ♭くらいの音だ。この音域は人間の聴覚特性上、音量が小さくてもかなり聞き取りやすい範囲になっている。最も聞き取りやすい音域はもっと上だが、そちらは高齢者には聞き取りにくい可能性もある。

 その下に(聞こえにくいが)最もエネルギーの強い音が含まれている。こちらは約250〜400Hzくらいの高さで、中央のドからラ♭の辺りに相当する。これは女性の声の平均から高めの高さと近い。

 国民保護サイレンは聞き取りやすい高さで、2度の不協和音を不安定に推移させるという仕組みになっていることが分かる。

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