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“正直”に徹したら「何かすごそう」なハサミができた コクヨの「HASA」分かりにくいけれど面白いモノたち(1/5 ページ)

コクヨの「HASA」は2000円台半ばという一般用としては高級なはさみのシリーズだ。しかも見るからに何かすごそう。その高級感と切れ味の秘密を探ろうとコクヨを訪ねた。

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 はさみという道具は、紀元前1000年には既に存在していたといわれている。当時はU字型の、現在は通称「和はさみ」といわれる形のもので、現在の主流となっている2枚の刃が交差してハンドルで操作する形は1880年頃にフィンランドのフィスカース社が作ったとされている。そしてそれ以降、はさみの基本的構造は140年以上変わっていない。


今回取り上げるコクヨ「HASA-001」は2420円。刃渡り:70mm、全長:187mm、刃形状:カーブ刃、板厚は2.0mm、刃はステンレス製、ハンドルはABS樹脂。ハンドルの色は黒のみ

 しかし、実ははさみ自体はきちんと進化している。例えば、紙を切るためのはさみと布を切るための「裁ちばさみ」、植木を切るはさみなどは、その刃の作り方やハンドルの構造など、全く別物といって良いほど違う。刃物である以上、切るものに合わせてバリエーションが生まれるのは当然だし、道具である以上、専門化していくのも当たり前の道筋だ。

 家庭用の一般的な用途に使うはさみも様々な製品が発売されている。最近ではプラスの「フィットカットカーブ」シリーズが、その湾曲した刃によって、刃の先の方でも切りやすいと評判に。普及価格帯ということもあって大ヒットとなっている。


プラスの「フィットカットカーブ」シリーズ(画像はスタンダードタイプ)。価格は350円

 コクヨの「HASA」も、そういった一般用途のはさみのカテゴリー内で作られた製品なのだけど、価格が2420円から2750円と、やや高級路線になっている。つまり、コクヨの一般用はさみのフラッグシップモデルなのだ。

 実際、使ってみると確かに高級感がある。マットな質感の刃といい、握りやすいけれどシンプルな形状のハンドルといい、切る時の感触の良さといい、スムーズな開閉といい、コクヨの普及タイプの人気商品「サクサ」シリーズ(チタンコート・グルーレス刃のモデルで1210円、一番安いモデルで462円)と比べても、明らかに使いやすく、カッコいい。開閉の際の感触が全く違うのだ。そして、力が伝わりやすいというか、切る時に力がほとんど要らない感じで、スーッと切れる。


「HASA-001」「HASA-002」で採用されているカーヴ刃。コクヨ独自の設計を老舗刃物メーカーの貝印が生産している。写真は「HASA-001」

 リリースを見ると「切れ味を洗練させたコクヨ独自設計刃(HASA-001、002のみ)」とか、「耐久性の高い2段刃付け」とか、「刃同士の接触面を減らす加工」とか、「刃の種類によって大きさや形の異なるハンドル」とか、「ショットブラスト仕上げ」とか、色々書いてあって、なるほど、だから使いやすいのかと納得しそうになるし、「何かすごそう」というのは伝わる。

 しかし、はさみは前述の通り、その形や構造にほぼ変化がない道具で、実際のところ何が「良いはさみ」なのか、いまひとつピンと来ないところがある。なので、コクヨのHASA開発担当者であるステーショナリー事業本部 文具本部 文具開発部の藤谷慎吾氏に、その開発経緯をうかがった。

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