「2足歩行の人間」が「4足歩行のロボット」を全身運動で直感操作するとこうなる:Innovative Tech
韓国のソウル大学校と米ジョージア工科大学に所属する研究者らは、人が直感的に4足歩行ロボットを制御できる手法を提案した研究報告を発表した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
韓国のソウル大学校と米ジョージア工科大学に所属する研究者らが発表した論文「Human Motion Control of Quadrupedal Robots using Deep Reinforcement Learning」は、人が直感的に4足歩行ロボットを制御できる手法を提案した研究報告だ。前足を上げる、後ろ足で立つなど、モーションキャプチャーシステムを用いてユーザーが全身運動で4足歩行ロボットを制御する。
過酷な環境の探索などに有効な4足歩行ロボットだが、現場での柔軟な動きが必要になる。そこでこの研究では、直感的な動作でロボットを制御できるヒューマンモーションコントロール・インタフェースを提案する。
このアプローチは、人間の直感とロボットの運動能力を組み合わせたものになる。運動制御モデルは、Motion retargetingモジュールとImitation controlポリシーの2つの主要コンポーネントで構成する。
Motion retargetingモジュールは、人間のライブモーションを入力とし、それを物理的に有効な適切な4足歩行ロボットのモーションに変換する。そしてImitation controlポリシーでは、与えられた4足歩行ロボットの動きを模倣できるようにするために制御ポリシーを学習する。Motion retargetingモジュールを教師あり学習で開発し、Imitation controlポリシーを強化学習で学習する。
主な動きは、人の腕の動きでロボットの前足が動作し、2本足の歩行でロボットが前進する。人が後ろにのけぞってパンチすると、ロボットの前足もやや上方向に伸びる。犬が前足を上げた状態で立つポーズや、そこから前足をパンチする動作も可能だ。
実証実験では、モーションキャプチャーシステム「Microsoft Azure Kinect」と実物の4足歩行ロボットを用い、人間のユーザーがさまざまな運動タスクを実行できるかを検証する。その結果、直進やカーブで対象物に接近するだけでなく、座位の状態で傾いて遠くの対象物に手を伸ばす、立位し高い位置の対象物に手を伸ばすなど、高度な動きにも成功した。
Source and Image Credits: Sunwoo Kim, Maks Sorokin, Jehee Lee, and Sehoon Ha. 2022. HumanConQuad: Human Motion Control of Quadrupedal Robots using Deep Reinforcement Learning. In SIGGRAPH Asia 2022 Emerging Technologies (SA ’22 Emerging Technologies). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Article 5, 1-2. https://doi.org/10.1145/3550471.3564762
関連記事
- マスク氏のNeuralink、脳埋め込みデバイス披露イベントでテキスト入力するサルを紹介
イーロン・マスク氏率いるNeuralinkが脳埋め込みデバイスの進捗披露イベントを開催。デバイスを埋め込んだサルがMacBookにテキストを入力する動画を公開した。マスク氏は半年以内に人間の臨床試験が可能になると語った。 - 肩に寄生するヘビ型ロボット 多関節を遠隔から操作 早稲田大などが技術開発
早稲田大学中島達夫研究室、カタールのQatar Universityの研究者らは、肩の上で動作するヘビ型ウェアラブルロボットを提案した研究報告を発表した。肩から出た8自由度のロボットを、遠隔から別のユーザーが視覚と聴覚のフィードバックを受けながら操作する。 - ロボットはカウンセラーに適性あり? 子供との間に信頼関係は生まれるのか
感染症によるパンデミックの影響は、身体だけでなく精神面にも打撃を与える。この問題を解決するために、英ケンブリッジ大学はロボットによる子供のメンタルケアを研究している。 - レトロゲームの“土管ワープ”を物理装置で表現 ロボット「Game Order」 明大などが開発
札幌市立大学、明治大学が中心となって進めてきた研究プロジェクトチームは、レトロゲーム内の表現を現実世界のディスプレイ群によって再構築した研究報告を発表した。 - スローでイージーな低速モビリティで見直す”移動”の可能性
人間が歩く速度と同じくらいゆっくり移動する低速モビリティがある。主に観光業への利用を目的に開発が進められている。パナソニックやホンダ、トヨタなどが開発を進める車両を紹介する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.