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コラム

実は人間がテクノロジーの道具に? “AIにはない人間の資質”を問う異色の展示「アンラーニング・ランゲージ」(3/4 ページ)

あなたが人に語った意見は本当にあなたが考えたものか。実はインターネットにそう考えるよう仕向けられたものではないか。テクノロジーは本当に人間の能力を拡張する道具なのか。実は人間の方がテクノロジーにとって便利な道具となっていないか。今や当たり前の社会インフラとなっているインターネットに、こうしたさまざまな疑問を投げかける展示を山口情報芸術センターが開いている。

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AIが観客に指示をして演者にしてしまう舞台


「アンラーニング・ランゲージ」体験中の舞台。スマートリビングルームに招かれた最大8人の観客は、天井から吊るされた4本のマイクやスピーカー、監視カメラを通してAIと対話。AIを驚かす返事をすると部屋全体が揺れることも

 そんなYCAMの「鎖国[WALLED GARDEN]」プロジェクトの集大成となる作品が観客体験型の新作パフォーマンス作品「アンラーニング・ランゲージ」だ。

 デジタル社会に問いを投げかけ続ける2人のアーティスト、ローレン・リー・マッカーシー氏とカイル・マクドナルド氏の競作となっている。

 「鎖国エクスプローラ」の作者でもあるカイル・マクドナルド氏は、プログラム・コードなどの新しいテクノロジーが社会にどのような影響を与えるかを模索するアーティストで「ただのデータの羅列をストーリーに昇華できるのは人だけ」と考えてさまざまな作品づくりに取り組んでいる。

 一方のローレン・リー・マッカーシー氏は「人々がコンピュータアルゴリズムとどのようにやりとりを交わし、それが人同士のやりとりにどのような影響を与えるか」という点に大変強い興味を抱くアーティスト。

 過去には自身の名前、「ローレン」と名付けた作品で、自らAIスピーカーになりきってスピーカー越しの命令を聞いて家電製品のオンオフをしたり、住人のさまざまな質問や悩みに耳を傾けたりした作品を手掛け、長らくやりとりを続ける中で人々の行動がどのように変わったかなどをビデオ作品にまとめたりしている。

 この2人が手掛けた新作「アンラーニング・ランゲージ」には、1つの大きな裏テーマがある。テクノロジーの発展により私たちは、個人の嗜好やライフスタイルに沿ったAIのアシストを受けられるようになったが、その背景にはインターネットを通じて私たちの活動を収集、分析し、次の行動を予測する巨大なシステムがある。作品は、その状況にスポットライトを当てるのが狙いで「AIにはない人間の資質とはなにか?」というテーマを探求したものだという。


「アンラーニング・ランゲージ」作者のローレン・リー・マッカーシー氏(左)とカイル・マクドナルド氏(右)。2人とも過去の作品もかなり面白いので、ぜひそれぞれの公式サイトを訪問してもらいたい

 パフォーマンスとは言っても、固定された出演者はAIだけで、AIからの指示を受けた観客自身が演者にさせられてしまうというインタラクティブな作品になっている。

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