ベートーベンの楽曲に「三三七拍子」は入ってる? 音符36万個を学んだAIで調べる「Beethoven Beats」:遊んで学べる「Experiments with Google」(第29回)(2/2 ページ)
ベートーベンの楽曲に三三七拍子のリズムは含まれているのか? ピアノソナタ13時間分を学んだAIで調べられるWebアプリ「Beethoven Beats」を使ってみた。
ベートーベンはモーツァルトの影響を受けたのか?
ベートーベンはモーツァルトから多くの影響を受けたらしい。それならモーツァルトの作品で使われたモチーフが、ベートーベンのピアノソナタに使われていてもおかしくない。早速探してみる。
取り上げるモーツァルトの曲は、この連載の別記事「AIオーケストラの指揮」で使った名曲「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」にした。「タン、タタン、タ、タタタタタ」という最初のメロディは、多くの人が知っているだろう。
提示された結果は、「ピアノソナタ第27番」の第2楽章になった。とても美しい曲なのだが、運命のモチーフほど似ているようには思えない。モーツァルトのほかの曲をいろいろと入力すれば、もっとよく似た曲が見つかるだろうか。
日本で定番の三三七拍子 ベートーベンも使ったのか?
最後にベートーベンと縁遠いリズムということで、日本で定番の三三七拍子を探してみた。見つかったのは、「ピアノソナタ第21番『ワルトシュタイン』」の第1楽章。美しいメロディに気を取られて気付かなかったが、リズムは確かに三三七拍子と似ている。
これは面白いものに出会えた。他にも意外性のあるリズムを使ったピアノソナタを見つけて、友達に自慢したくなる。
AIがソナタ32曲を学習 音符は36万個分
Beethoven Beatsを開発したのは、Googleのアート紹介プロジェクト「Google Arts & Culture」のチームだ。長い歴史を誇るドイツのレコードレーベル・Deutsche Grammophonと、指揮者でありベートーベンのピアノソナタ演奏で知られるピアニスト・Daniel Barenboim氏も開発に協力していて、力の入れ様が分かる。
開発チームは、Googleのオープンソース機械学習ツールキット「TensorFlow」や音楽製作ツール「Magenta」を利用している。ピアノソナタ全32曲のデータを学習させ、入力したリズムに似た部分を見つけ出すAIを作った。学習データの量は録音時間が13時間、音符の数は36万2142個に及んだという。
リズムから該当する曲を探し出すという作業自体は、人間の方が上手にこなすだろう。しかしこれだけ膨大なデータが対象になると話は別だ。人力検索は難しいので、AIに任せる選択肢は有用だ。Beethoven Beatsは音楽を楽しめるだけでなく、AIのユニークな活用方法を知れるツールになった。
なお、Beethoven Beatsは、ベートーベンを多彩な角度から楽しんだり学んだりできるGoogle Arts & Cultureのまとめページ「Beethoven Everywhere」に含まれるコンテンツだ。ベートーベンの作品を使ったリズムゲーム「Blob Beats」や、ベートーベンとポピュラー音楽との関係を紹介するコーナーなどもある。ベートーベンの新たな一面を知ることができるはずだ。
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