追い込まれた楽天モバイル、黒字化に向けなりふり構わず 楽天市場の出店者にも契約依頼:房野麻子「モバイル新時代」(3/3 ページ)
三木谷氏は、脇目も振らず楽天モバイルのためなら何でもする構えだ。23年は、楽天モバイルにとって1つの勝負の年となる。なぜなら楽天モバイルは23年中に単月黒字化を目指しているからだ。
黒字化は本当に達成できるか
0円廃止でARPUは上向き、プラチナバンドを少しでも獲得してエリアが改善されれば、契約者数は増えていくだろう。ただ、黒字化できるほど契約者が急激に増えるかといえば、少々疑問だ。23年の単月黒字化達成は難しいのではという意見も目にする。
というのも、かつてソフトバンクが携帯電話事業に新規参入した際は、アップルのiPhoneをしばらく独占販売できたことが契約者増に大きく寄与した。現在、楽天モバイルには、ソフトバンクにとってのiPhoneのようなキラーデバイスやキラーサービスがない。たとえエリアを整えたとしても他キャリアに勝るほどではなく、目立った魅力がなければユーザーが楽天モバイルに乗り換えようという気にはならない。
一方、楽天モバイルの「完全仮想化ネットワーク」技術を海外に売る楽天シンフォニーの事業が、国内の携帯電話事業をカバーすると期待する声もある。ドイツの通信事業者1&1などから受注しているが、22年第3四半期までの累計売上収益は3.15億ドル(約408億円)。受注額は31億ドル(約4000億円)を突破しているが、大きな利益を得るのはまだ先になりそうだ。
昨年末には楽天モバイルショップの閉店がSNS界隈で話題になった。今年早々には、これまで展開していた「楽天モバイル 郵便局店」を約200店舗、23年4月末までに閉店することが明らかにされた。
黒字化達成のために、今後もさまざまなコストカット、キャンペーンが行われるだろう。達成できなければモバイル事業存続の危機ともささやかれている23年は、これまで以上に楽天モバイルから目が離せそうにない。
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