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Microsoft vs. Google、「チャット検索」競争勃発 “会話で調べる”は今後主流になるのか(2/3 ページ)

米Microsoftと米Googleで始まったチャットAIを使った検索サービス競争。これまでのキーワード検索から、会話して調べる「チャット検索」は主流になるのだろうか。

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「検索目的」に改良された「新しいBing」のAI

 チャットbot AIがネット検索と同じような役割を果たすには、内容の信頼性を高める仕組みが存在するのと同時に、利用者が「この内容は信じていいのか」を、ある程度判断可能にする仕組みも必要になる。

 シンプルに言うなら、新しいBingのチャット検索は、ジェネレーティブAIを検索に使うためにブラッシュアップしたものだ。ジェネレーティブAIはOpen AIの系列なのでChatGPTとそこまで大きな差はないが、その上で必要な「内容の担保」や「最新の情報への対応」といった部分を追加するために、Microsoftは新しく「Prometheus」という技術を組み込んだ。


検索向けに内容担保に向けた要素を実現するため、Microsoftは「Prometheus」という技術を搭載

 その結果としてBingでのチャット検索は、次のような特徴が表に出てくることになった。

 まず、「チャットの文章を解析し、検索に必要なキーワードを抽出していることを可視化する」こと。

 次の画面は、Bingで検索した時に出てくるものだ。チャットとして入力した文章から、検索で使うべきキーワードが抽出され、「自分がなにを聞こうとしているのか」がよく分かる。


検索に使った文章は、内容が分析されて検索用のキーワードが生成される。すなわちやっていることは従来の「検索」

 次に「検索結果に索引をつけること」

 ジェネレーティブAIを使った検索の本質は、チャットで得たキーワードからそれらしい文章を作ることだ。何度も繰り返しているように、その際、文章の内容が正しいかは担保されず、あくまで人間が判断しないといけない。

 だとすれば、判断のための情報は必須になる。

 そこでBingでは、検索から文章を生成した後、どの部分をどんなWebから引用して生成したのかを表示するようになった。


チャットの結果には「索引」がつき、その情報がどんなWebを元にした内容かを判断できるようになっている

 ChatGPTはあくまでジェネレーティブAIであって検索エンジンではない。検索エンジン「っぽい」こともできただけだ。

 Bingはそこで、ちゃんと検索エンジンとして使うために必要な要素を搭載してきた、という風に考えるといいだろう。

チャット検索の本質は「UI改革」

 チャットによる検索を使うと、まるで「今まで見つからなかったことが簡単に見つかる」ように思える時がある。

 だが、それは錯覚だ。

 ChatGPTが見つけて文章にしているのは、もともとネットにあったものである。その点はBingも変わらない。ChatGPTが2021年以降の情報を加えていないのに対し、Bingは最新のWeb情報を常にクロールし続けている、という違いはある。

 ネット検索は「情報が書いてあるWebを探す」ものだったので、検索してリストが出るだけで良かった。

 しかし世の中は変わり、検索するのは「情報を教えてもらうため」になった。検索結果としてWebだけでなく、リアルなもの(経路検索や天気など)が出てくるようになってその傾向は強くなっていったし、Googleも検索で求められている答えをまず提示するようになっている。


現在のGoogle検索。質問内容によっては、Webのリストではなく答えにつながる情報が直接出てくるこもある。その方が便利だからだ

 その先として、さらに使う側が求める「答えだけください」というニーズに沿ってUIを最適化したのが「チャットによる回答」である、という言い方はできるだろう。

 キーワード検索よりも自分が求めている質問を具体化しやすく、検索結果がすぐ把握できる形にまとまっているため、キーワード検索よりも「ちゃんと探せた」感があるのは間違いない。「検索の変化というより、検索のためのユーザーインタフェースの変化」というのはこういう部分を指す。

 結局のところ、要約や記事を作成する機能も、得られた結果をどう使うか、という話でしかない。

 問題は「滑らかな文章になってはいるが、その論理形成や情報の内容が全て正しいのか担保できない」ことにある。過去のネット検索もそうだし、新聞や雑誌の記事を精査する作業と本質は同じではあるのだが、誰もが常にそれをできるわけでもない。

 明らかに「AIが生み出す回答」はよくまとまっていて、多くの人が、多くの事象で納得できる回答だろう。

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