“SaaSバブル崩壊”でも54億円調達、京都のスタートアップが実現できたワケ 経営陣に裏側を聞いた(2/2 ページ)
2月に54億円の調達を発表した京都のスタートアップ・Baseconnect。”SaaSバブル崩壊”が叫ばれる中で、調達に成功した理由は。経営陣に聞いた。
「無担保無保証・長期与信」実現のワケ 経営層の分析は
今回のような条件が実現した背景にはいくつかの理由があるという。1つはBaseconnect側が当初からこの条件を目指し、それを崩さなかったことだ。「当初から基本的な方針を定め、自分たちはこの条件での融資しか必要ないと交渉していた。他のスタートアップだと、途中でブレて楽な方向に行ってしまうことがあるが、最後まで粘り強くやれた」と中辻さん。
もう1つがサービスそのものが持つ強みだ。三菱UFJ銀行は融資に関する発表の中で、Baseconnectの事業を「情報生成に時間とコストがかかるため参入障壁は高い」と評している。國重CEOも「ビジネスのコアはデータベースであり、SaaSではない。営業体制の分業や機能開発など、体系化されたノウハウでは、100万社の企業情報を作るのはすぐにはまねできない」と強調する。
一方で、エクイティは力を抜いていたわけではない。もともと事業会社との資本業務提携を視野に、調達前から事業作りを進めていたと中辻さん。「CVCだと事業ありきが当たり前。業務提携がシュアなものでないと、その次の資本提携には進めない。形のあるビジネスモデルを整えておいて、資金提携もお願いしますという流れ」(中辻さん)
「ファイナンスは法人営業」 投資家とのコミュニケーション、要点は
投資家・金融機関とのコミュニケーションも調達を後押しした。投資家などへの説明に当たっては、相手が気になるであろう情報を先回りして話すことを心掛けたと中辻さん。「ファイナンスは法人営業。投資家にしろ金融機関にしろ『ぜひやりたい』という感覚になってもらわないといけない。お客さまに当たる相手が思っていることを先出しできるように意識した」(中辻さん)
例えばデットの相手に対しては、金融機関が重視するであろう(1)黒字化の蓋然性、(2) 返済原資、(3) 資金の使途、(4)財務安定性──の説明を重視。70ページに及ぶ資料を作成し、質問に先回りして答えられるようにしたという。
「投資家と金融機関が気にするポイントは違う。ファイナンスとひとまとめにして一緒の資料を作ればいい訳ではない。今回については、相手の気持ちになって説明できたのがよかった」(中辻さん)
「投資家と起業家は別の人種で、バックグラウンドが全然違う。使う言葉や思考回路も全部異なる。自分の事業をそのまま説明せず、向こうの持っている知識の範囲で説明することが大事」(國重CEO)
ただし反省点も 「時間かけすぎた」
ただ、反省点もあると2人は振り返る。最も大きかったのは、資金調達に時間をかけすぎた点だ。リード投資家(株主間契約の取りまとめなども担う最大の貸し手)を広く探しすぎたことから、SaaSバブル崩壊のタイミングにぶち当たってしまったという。
「一概に悪かったともいえないが、時間がかかった結果、調達の環境が悪いタイミングに入ってしまったことを考えると、もっと早く判断できれば削減できた」(國重CEO)
Baseconnectは今後、調達した資金を活用し、新規事業の模索や経営人材の採用を強化する予定だ。「われわれはやりたいことの0.1%もできていない状況。データ・プロダクトを作るにもお金がかかるし、顧客を獲得するにもSaaS型なので先にお金が出ていく。現在はビジネスモデルをしっかり作っていくフェーズなので、プロダクトを進化させつつ、新規事業へのチャレンジや、経営人材の採用をやっていきたい」(國重CEO)
【訂正:2023年3月20日】当初、中辻仁さんの役職をCFOとしておりましたが、正しくは財務責任者だったので訂正しました。
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