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ソフトウェアエンジニアの“燃え尽き症候群”への対処法とは? 米国チームが調査Innovative Tech(1/2 ページ)

米University of California, Irvine(UCI)に所属する研究者らは、現役で働くソフトウェアエンジニアのメンタルウェルビーイング(精神的健康)を調査した研究報告を発表した。

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Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。Twitter: @shiropen2

 米University of California, Irvine(UCI)に所属する研究者らが発表した論文「Mental Wellbeing at Work: Perspectives of Sofware Engineers」は、現役で働くソフトウェアエンジニアのメンタルウェルビーイング(精神的健康)を調査した研究報告である。

 ソフトウェアエンジニアは、燃え尽き症候群の割合が高いことが分かっている。そこで研究者らは、米国の多様な職場環境に勤務するソフトウェアエンジニア14人(女性5人、男性9人)を対象にメンタルウェルビーイングに関する調査を行った。参加者は、異なる企業で働いており、2年目から20年以上と幅広い経験を持つ。


ソフトウェアエンジニアの燃え尽き症候群対策を調査

 この調査では、参加者に職場でのメンタルウェルビーイングについての経験や管理するための戦略、悪いときの対処法、不調時に仕事に与える影響、会社が支援するためのポリシーについてなど、自由形式の質問に答えてもらった。


参加者の詳細

 調査の結果、多くの参加者が仕事中に「ストレス」「不安」「不快感」といった感情を感じ、これらがメンタルウェルビーイングの低下と関連していることが分かった。原因は「自分のやった仕事が評価されない」「崖っぷちに立たされているような感じ」「正しい精神状態にない」といった理由から起こることが多かった。

 また身体的な反応としては「歯ぎしり」や「めまいや頭痛がする」などがあった。これらを介して「挫折」や「燃え尽きた」といった感情を抱くことが明らかになった。

 中には、ストレスは必ずしもネガティブな経験として捉えていない参加者もいた。技術的な挑戦に伴うストレスや、適度なストレスがモチベーションにつながることもあるようだ。

 職場でのメンタルウェルビーイングの課題に対処するため、参加者はさまざまな個人的対策を実施していた。主な対策としては、(1)個人の時間を守る、(2)仕事を優先する、(3)メンタルウェルビーイングについて学ぶ、(4)社会的サポートを得るの4つが明らかになった。

 (1)個人の時間を守る。多くの参加者は、仕事とプライベートの時間を分けるためにToDoリストを作成し、カレンダーに時間を割り当てていた。さらに、定期的に休憩をとり、記事を読んだり、ドライブに行ったり、犬を連れて散歩したりしてリフレッシュしていた。これらの活動によって、仕事からいったん逃げ出すだけでなく、頭をすっきりさせたり、リラックスしたりできると感じていた。

 (2)仕事を優先する。多くの参加者は、メンタルウェルビーイングの低下の要因を解決するために、仕事を他の活動よりも優先する傾向があった。特に、急な締め切りなど、コントロールできない要因からストレスが生じる場合「それを押し通そうとするしかない」と感じる参加者もいた。

 参加者の一人は「ストレスそのものに対処するのではなく、ストレスの原因となるものに集中している」と述べている。このように仕事に集中することは、メンタルウェルビーイングの低下の潜在的な原因を解決するだけでなく、ネガティブな感情を紛らわす役割も果たすことがあると分かった。

 (3)メンタルウェルビーイングについて学ぶ。参加者の中には、自分自身のメンタルウェルビーイングについて意識が高く、専門家(精神科医やカウンセラーなど)の助けを求めたり、ソーシャルメディアで学んだり、アドバイスを求めたりして学び続けるものもいた。

 メンタルウェルビーイングを継続的に学ぶことで、悪化する潜在的な要因や状況を回避できるようになる。例えば、ある参加者は、過去に外国人チームメイトとのコミュニケーションでメンタルウェルビーイングが低下した経験があるため、同じ状況に直面しないよう、適切に伝えることが重要だと述べていた。

 (4)社会的サポートを得る。参加者たちは同僚に支援を求めていた。経験を共有したり話を聞いたりすることで、孤独感を減らし、安心感を得ることができた。例えば「同僚とランチに出掛けて交流することで息抜きする」「職場に人がいることが分かっているだけでいいから、周りに人が必要だ」というような意見があった。

 一方、リモートワークでは「多かれ少なかれ、全ての交流が計画的に行われる必要がある」という回答があった。参加者は組織が主催するソーシャルイベントや、SlackやDiscordのようなメッセージツールやビデオ会議を通じて、バーチャルにソーシャルサポートを求めていた。「基本的には、お互いに吐き出すだけ」「一緒にオンラインゲームをプレイしながら交流する」などが挙がった。

 参加者たちは上司にも支援を求めている。例えば「上司との1対1の面談を毎週行っている」という参加者や「精神的な不安を訴えたとき、上司がいつでも数日の休暇を与えてくれる」と話す参加者もいた。

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