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「書店ゼロ」の市町村増加 “動画全盛”で、子どもの国語力はどうなる?小寺信良のIT大作戦(3/4 ページ)

筆者は1981年まで宮崎県宮崎市に住んでいたが、市内に本屋はかなり多かったように思う。上京後、2019年に宮崎市へ戻り、37年ぶりの変化を楽しみつつ暮らしているところだが、当時あった本屋はことごとく存在しない。4つあったデパートのうち3つが撤退しており、街の様相も相当変わってしまっている。

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文章に頼らない子どもたち

 現代の子どもたちに懸念されているのが、文章力の低下である。今の中高生たちは、受験対策としてB5判型見開きで展開される国語の長文問題文に、うんざりしている。文字数にして、1600字程度だろうか。学校では毎朝、10分程度の読書の時間を設けてはいるが、その程度の時間ではいくらも読めない。読むのが遅いからである。

 子どもたちが知識のよりどころとしているのは、ネット動画だ。ネットでの調べものは、大抵動画から見つけてくる。授業はもともとしゃべりのライブだし、人が動いてしゃべる説明のほうが、学ぶという行為と直結しているのかもしれない。

 だが大人社会で求められるのは、文書化された指示書や仕様書を読み取って実動し、結果を出したのち文書に落とし込むというタイプの国語力である。これは時代が進めば、報告書が動画で済むようになるのかと言えば、そうはならないんじゃないか。

 なぜならば「文書化する」とは、事態を圧縮して記録保存するという、事実関係の「.zip」的側面があるからだ。「書面でよこせ」は、役所の記録がすべて動画保存にならない限り、今後もフォーマルなお作法として残り続けるはずである。

 国語力は、読書量に比例する。いい文例を沢山頭に入れることが、文章力にも繋がる。

 子どもたちの国語力を上げるには、本を読ませるのが一番の近道だろうと思うが、まとまった文章は教科書以外に接触機会がない。

 だがそれは、本屋さえあれば解決する問題なのか。

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