人格コピーAIは21世紀の写真? “亡き妻のAI再現”で受賞の松尾Pと「AIの遺電子」山田胡瓜が考える「デジタル人格」のこれから(5/5 ページ)
技術進歩の加速が著しいAI。実在する人物の特徴あるいは人格をAIで再現できるようになる将来も近そうだ。そうしたときにどんなことが起こりうるのか。アニメ「AIの遺電子」原作者の山田胡瓜さんと、亡き妻の面影をAIを駆使して再現する取り組みで「第1回 AIアートグランプリ」の最優秀賞を受賞した松尾公也さんが議論した。
山田 AIの遺電子1話の話にもなりますが、やはり人格のバックアップがあるといっても、それは自分の意識の継続ではなく分岐じゃないですか、というのが一つの問いかけになっている。
1週間前にバックアップしたから大丈夫っていう考え方に対して、それは自分とは別の存在であって、もうすぐバグって停止しちゃうからバックアップを適用せざるを得ないとしても、自分は今ここでバグって死ぬとしか思えない。
バックアップを起動して1週間前と瓜二つのお母さんが復活するんですが、それに対して子供は同じお母さんとして扱っていいのか、あのとき停止してしまったお母さんはどこに行ったのかとか、そういうしこり、割り切れないものを子供は抱えてしまったのが第1話。
デジタル人格はポジティブに捉えられるところもたくさんあるんですけど、思いもよらなかった倫理的混乱を生み出す余地はすごくある。故人そのものではやっぱりない、というところは技術の過渡期であればあるほどありそう。
だから「異世界だから」という捉え方はすごく面白かった。それを完全に同一視して「継続した本人なんだ」っていう風に思うと何か不都合が生まれる可能性はあるんだろうなって思います。
(デジタル人格が)永遠に残り続けるってなったときに、永遠に残り続けてほしいと思うのか、あるいは形見のように自分と一緒に停止してほしいと思うのか。そういうジレンマとかありそう。あるいは親戚が遺したデジタル人格どうしようかとか、そんなに親しくはないけど遺っててどうしようみたいな。
松尾 遺言で「自分のデジタル人格残してくれ」と言われてどうしようみたいな話もありそうですよね。
山田 全然知らないところから相続したデジタル人格とかw あ、一個ネタができたかも。ありがとうございます。
井上 それで言うと今まさにあるのが、長期間動いていないTwitterアカウント消しますという話じゃないですか? そういったアカウントを持っていた故人が結構多くいるわけで、「あの人のアカウントが消されてしまうのは嫌だ」っていう声は多いと思います。
松尾 僕も妻のアカウントは持っていて、そこには常にアクセスできるようにはしているので、見ることはできる。アクセスしているから消されることはないと思うんですが、みんながみんなそうできるわけではない。
山田 デジタル人格ってタダではなくて、コストが継続してかかり続ける。それがどんどん増えていったときに誰がそのコストを背負うのか。それはこれから問題になると思っていて、それは四十九日じゃないけれど、だんだん地球意識的なものに吸収されて、最終的には「地球意識にはいるんだけど」っていう建前で、個としての人格は薄れて消えていくみたいな形もあるのかな。
松尾 そういう意味で面白いと思ったのは、大規模言語モデルにしろ、画像生成AIにしろ、学習するじゃないですか。学習した元のデータセットがあって、人の言葉なり姿なりがそういうところに吸収されて、学習されて残っていけば、それは「アカシックレコード」的なものになる。そこから生成されるときにはその人の要素が少しだけ入っていて、うまくすればその人が再構成される、というとSFっぽいけれど、実際それに近い形なんじゃないかなと思いました。
山田 何をもって残るというのか。何かしらその人が存在したことがAIに影響を与える、そのAIが人を変えるような相互関係があると、デジタル人格が消えた場合にも、その人の存在が確かにそこにいたんだと思えるポイントかも。
松尾 自分が残したものを全て学習していいと許諾を与えるような、「ジェネレーティブコモンズ」のようなものがあっても面白いですね。
山田 それをもって自分はこの世から去ります、という残し方はありかもしれませんね。
(前の記事:“AIグラビア”でよくない? 生成AI時代に現実はどこまで必要か)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
“AIグラビア”でよくない? 生成AI時代に現実はどこまで必要か
集英社のAIグラビアは1週間でお蔵入りになったが、AmazonやYoutubeには大量の「AI生成グラビア」コンテンツが登録され、存在感を示し始めている。こうした非実在のデジタル人物はビジネスや世の中をどう変えるのか。アニメ「AIの遺電子」の原作者である山田胡瓜さんと、亡き妻の面影をAIを駆使して再現する取り組みで「第1回 AIアートグランプリ」の最優秀賞を受賞した「松尾P」こと松尾公也さんが語り合った。
AIの遺電子の根底にある「2つのやばさ」と「3つのAI」 ChatGPT到来を予言した世界観を作者本人が解剖
7月開始のテレビアニメで注目を集める、人とヒューマノイドの共存を描いた近未来SF「AIの遺電子」。作者とAI専門家との連続対談がここに実現。初回は「第1回 AIアートグランプリ」の最優秀作を受賞した「松尾P」こと松尾公也さんと、「人格のデジタルコピー」の話などあれやこれやを語り合う。
亡き妻の歌声をAIで再現 「AIアートグランプリ」受賞
AIを使って作られたアート作品を表彰する「第1回 AIアートグランプリ」の最優秀作に、他界した妻の歌声と写真をAIで生成したMVが選ばれた。
注目集める「AIコスプレイヤー」の作り方を調べてみたら、“無規制地帯”が見つかった イラスト生成のダークサイド
注目集める「AIコスプレイヤー」。その作り方を調べてみたら、インターネットの“無規制地帯”が見つかった。
元AV女優・上原亜衣さん、自身のAIグラビア写真集発売 Kindleの絵画ランキングで1位に
元AV女優でインフルエンサーの上原亜衣さんは、AIグラビア写真集「上原亜衣『再生』 AI Uehara 'Rebirth'」を発売した。販売形態は電子書籍版のみでKindleで配信中、価格は699円。