クラウド上で動く、異色な出自の動画編集ソフト「Atomos Edit」 試してわかった先進性と課題:小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(3/3 ページ)
これまでクラウド編集プラットフォームは、AivdやAdobe、GrassValleyといった編集ソフトメーカーが主体で製品化が進められてきた。ATOMOSのような周辺機器メーカーが手掛けるのは珍しい。同社の「Atomos Edit」を触りながら、狙いを探る。
クラウド編集で見えてくる課題
Atomos Editの公式サイトの説明によれば、海外取材などの現場での収録が終わるとすぐにクラウドに映像がアップロードされるので、自国にいる編集スタッフがすぐに編集にとりかかれるといったメリットが説明されている。
これは以前もGVのAMPPの例で少しご紹介したことがあるが、各国の時差を利用したワークフローに有効だ。
例えば米国で18時に収録が終了すると、日本では午前10時である。現場で撤収している間に、日本では編集作業に入れることになる。ただこうしたメリットを生かすには、現地のディレクターと日本の編集者とのコミュニケーションや信頼関係が重要になる。
つまり収録前に取材内容や番組意図などを打ち合わせしておかないと、いくら日本で作業できるからといっても、結局は現地入りしているディレクターが指示を出さないと何も始められないというのでは、こうしたクラウドシステムを使う意義が薄れる事になる。
一般的に日本の映像コンテンツ制作業界では、編集者の権限が小さいため、多くはディレクターの指示通りに編集する「オペレーター」といった立ち位置であることが多い。だが本当の意味のリモートプロダクションを確率するには、制作に関わる各パートのスタッフが専門性を生かして、自律的に動いてもらうというワークフローにシフトする必要がある。ワールドワイドではすでにこうしたワークフローで長年動いており、海外製のコラボレーションツールは、それを前提として設計されている。
こうしたツールは日本には合わないねー、で終わりにするのではなく、海外のスタンダードな方法でもやれるチーム編成にしていくというのも、日本のコンテンツ産業の課題であろう。
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