動き出した「地デジ4K化」 技術的には行けそう、でも募る“ソレじゃない”感:小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)
家電業界や放送業界が「4K」で湧いたのは、2015年頃の事だった。まだコンテンツもないのに多数の4Kテレビが市場に登場した。多くの人は、漠然と近い将来テレビ放送が4K化すると思っていたはずである。だが実際には放送帯域の問題から地上波の4K化は見送られ、CSおよびBSのみという事になった。
家電業界や放送業界が「4K」で湧いたのは、2015年頃の事だった。2013年に「東京オリンピック2020」の開催が決定し、総務省がそれに合わせて4K・8K放送のロードマップを策定、2015年にはまだコンテンツもないのに多数の4Kテレビが市場に登場した。
多くの人は、漠然と近い将来テレビ放送が4K化すると思っていたはずである。つまり一番視聴している地上波のテレビ番組が4Kで見られるようになると期待されていた。だが実際には放送帯域の問題から地上波の4K化は見送られ、CSおよびBSのみという事になった。
それでもBSの4K番組が充実すれば、地上波放送を時代遅れにしていくものと期待された。だが現実はBS放送の4K番組といえば、テレビショッピングか、かつてSDで制作された時代劇を4Kにアップコンしたものが大半という結果になった。強い番組はまだ地上波で、HD放送のままである。
日本では、地上波の4K化は強いニーズがあったことで、2018年ごろからNHKが中心となって放送実験を行なってきた。
地上波4Kの形
ITmediaでもニュースになっているが、総務省が地上波の4K化について情報通信審議会に諮問していた「放送システムに関する技術的条件」の答申が公開された。まずは技術者が集まって、今の技術なら4K行けそうだという道筋を示しただけで、これが確実に実施されるわけではない。放送局がビジネス的に乗れるかどうかという話はまた別、というわけである。
世界的に見れば、地上波を4K化する動きは少ない。実際に地上波で4K放送を実現しているのは韓国ぐらいである。フランスは2024年に開催されるパリオリンピックへ向けて、地上波の4K化を計画している。多くの国では、2000年初頭に始まったデジタル放送を、次世代規格へアップデートしようとしている。それは4K化というよりは、もっと高効率のコーデックを採用して帯域を整理したり、ラジオや通信と融合したりといった、規格としてのアップデートがメインで計画されているところだ。
「高度地上デジタルテレビジョン放送方式」として公開された資料から、次世代地上波放送の姿が垣間見える。解像度としてはHDから8Kまで定義されているが、8Kは将来さらなる技術改善された場合に適用とされており、現状ではまだ視野に入っていない。
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