岸田総理「日本はデジタル後進国」 マイナ保険証への理解を求める会見、何を語ったか【全文】(3/3 ページ)
岸田文雄内閣総理大臣は8月4日、“マイナ保険証”への不安を払拭するとして会見を実施。マイナ保険証や行政デジタル化への思いを語った。岸田総理はどのように国民に理解を求めたのか。本記事ではその全文をまとめた。
次に、マイナカードと健康保険証について申し上げます。「現行の保険証を来年(24年)秋に廃止するのは乱暴ではないか。廃止ありきではなく、国民の理解が必要だ」といったご指摘を、国民の皆さまから、また国会の審議でもいただいています。
現場の医療関係者との意見交換でも、安心して全ての患者の方々に受診していただく環境を維持するとともに、より良い医療を受けることができるよう、デジタル化を進めていくことが重要であるとのご指摘をいただきました。
私自身、マイナカードを巡る一連の事案発生以来、現行の健康保険証の廃止は国民の不安払拭のための措置が完了することが大前提と申し上げてきたところであり、こうした国民の声、現場の声を重く受け止め、国民の不安払拭を最優先とした対応を取っていくこととします。
必要なときに必要な医療にアクセスできる医療保険制度は、国民生活の安心そのものであり、その信頼を揺るがすことはできません。まずは、国民の不安払拭と国民お一人お一人に、デジタル化することによる利便性をしっかりと理解していただくことが必要です。
このため、現場の健康保険証を廃止する際にも、全ての国民が円滑に医療を受けられるよう、マイナ保険証を保有していない方全員に資格確認書を発行し、その有効期間やカードの形状も現行の健康保険証を踏まえたものとするなど、きめ細かい対応を徹底いたします。
これにより、マイナ保険証を保有していない方も、現行の健康保険証を廃止してもなお、これまで通り保険・医療を受けることができます。このように、国民の不安払拭に万全の対応を取ります。
さらに、従来から申し上げている通り、健康保険証の廃止は国民の不安払拭のための措置が完了することが大前提との方針にのっとり、秋にも完了するひも付けの総点検とその後の修正作業等を、私自身先頭に立って進めてまいります。
そうした作業の状況も見定めた上で、さらなる期間が必要と判断される場合には必要な対応を行います。政府としては、マイナ保険証への移行に際してマイナ保険証のスマホ掲載、電子処方箋の普及、新たなマイナンバーカードへの移行等を着実に進め、マイナ保険証のデジタル環境を整備していきます。
同時に、受診履歴に基づくより質の高い医療、多剤重複投薬の防止、転職等の際のシームレスな移行など、マイナー保険証によるメリットを国民に実感していただける実効的な仕組みを作ってまいります。こうしたデジタル化の取り組みにより、国民に選ばれるマイナ保険証にしていくことに全力を尽くします。
デジタル大臣には関係大臣と連携して、来週8日に総点検の中間報告と再発防止と合わせて、こうした内容を盛り込んだ対策をまとめるよう指示をいたしました。
マイナンバーカード関連事案の総点検と再発防止、そして信頼回復のための対応を行いつつ、国民にわれわれ日本が目指すもの、それは世界最先端のスマート行政府の実現です。そのためにデジタル基盤と政府の仕組み、双方の改革に取り組みます。
デジタル基盤については、個人・法人・不動産のオンライン認証の仕組みや、プライバシーをしっかりと守れるデータ流通基盤の整備、約1700の自治体が共有できる標準業務プログラム群の整備などを進めていく必要があります。予算の効果の“見える化”に向けて、国の予算事業それぞれにIDを振る取り組みも重要です。
一方で、政府の仕組みについては、アナログを前提とする昭和の時代に確立し、これまで起動してきたわが国の制度や行政組織、国・地方の役割分担などをデジタルの時代に合わせて見直していかなければなりません。デジタルの力を使って、公務員の人数を増やさずに多様化するニーズにきめ細かく対応できるようにする。こうした小さくて大きな政府としていくための、令和版行財政改革です。
その際、何よりも大事なのは、利用者基点での業務や制度の設計です。行政サービスの利用者としての国民に直接向き合っている自治体、介護、教育、産業等の現場で奮闘する人々が、国民の生の声を聞き、政策を磨き、デジタルを活用してきめ細かくサービスをお届けできる。こうした利用者視点の姿勢を中央官庁に徹底したいと考え、この夏には私自ら、努めて地方の現場の意見をうかがいに回っています。
マイナンバーカードの信頼回復にめどをつけ、この秋から令和版デジタル行財政改革を始動する準備を進めてまいります。私からの発言は以上です。ありがとうございました。
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