IT予算少ないマーケットで伸びる「バーティカルSaaS」 ベンダーの声から探る成長のカギ(1/3 ページ)
国内スタートアップの「バーティカルSaaS」は、なぜIT予算が少ないマーケットでも伸びるのか。ベンダーへの取材からそのカギを探る。
資金調達の発表が相次ぐなど、注目が高まる国内スタートアップの「バーティカルSaaS」。先日公開した前編では、ベンダー各社がどのような状況にあるか解説した。後編では、実際にバーティカルSaaSを提供するベンダーへインタビュー。これまで“クラウド不毛地帯”だった業界でもサービスを伸ばせる理由を探る。
今回インタビューしたのは、不動産賃貸業界向けシステムを提供するイタンジ(東京都港区)だ。同社は賃貸不動産領域において管理会社や仲介会社に対しSaaSを提供しており、2018年には不動産取引のプラットフォームを運営するGA technologiesに買収されたが、以降も変わらずサービスを続けている。
開示されているIR資料をみると、その成長率が目を引く。2023年10月期第2四半期にはARR(Annual Recurring Revenue、サブスクリプションビジネスにおける年間定常収入)が前年同期比+55%。さらに、顧客獲得の効率を示す指標である「ユニットエコノミクス」(顧客から生涯支払われる合計金額に対する、顧客獲得にかかる金額の倍率)は2022年比34.3倍だ。一般的にSaaSビジネスにおいては、ユニットエコノミクスは3倍以上であれば健全と言われる。
現在のARRは28億3000万円に達しており、これは建設業界向けバーティカルSaaSを展開し、21年にグロース市場に上場したスパイダープラス(ARR28億7000万円)と肩を並べる規模だ。
とはいえ、賃貸不動産業界は中小企業の割合が大きく、先述した「市場性が見込みづらい」領域でもある。バーティカルSaaSが急成長できる理由を、同社の永嶋章弘COOへのインタビューから探る。
著者紹介:早船明夫
株式会社ユーザベースでSPEEDA事業を推進後、独立。SaaS企業・スタートアップ分析note「企業データが使えるノート」を運営する株式会社クラフトデータを創業する。UB Venturesの外部パートナー/チーフアナリストも務める。
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