AIを使う=盗作? 「AIに感じる気持ち悪さ」と「AI時代の作品の説得力」をプロカメラマンが整理する(2/2 ページ)
生成AIに対する賛否が渦巻く中、クリエイターとして作品を発信する上でAIと人といかに向き合うべきか。自身も仕事や趣味にAIを活用しているプロカメラマンが整理する。
生成AIは美しい画像やコンテンツを生み出します。が、生成はほんの一瞬で、コストもかかりません。どのように命令を解釈し、何を組み合わせたのかも不明です。また、その成果に示唆的な表現が含まれても、生成AI自体には「それを示す意図がない」というバックグラウンドを人は読み取ってしまいます。
その美しさや技術的な特異性でなく、「生成AIが瞬時に生み出したという事実」だけで評価されることはある意味仕方のないことかもしれません。
ピクシブが禁止した“AI生成作品”は「制作過程のすべてもしくはその主要な部分にAI(これに類する技術を含みます。)を使用して生成したコンテンツ」、つまり“生成AIだけ”の作品を指しています。こうした作品と自分の作品を並べて見られたくない、というイラストレーターの心情はこういうところにあるのだろうなと思います。一般ユーザーの「人の手で描かれた絵が見たい」という気持ちとも近いところにありそうです。
プロセスを短縮しただけ問われる「作品の説得力」
生成AIに関わらず、テクノロジーの進歩によってあらゆる制作過程は単純化され、ごく一部の人しか扱えないような専門的なものではなくなりつつあります。コストも下がりました。これは同時に、似たようなものが世の中に溢れるということを意味します。
世の中の作品の絶対数が増えても、1人あたりの可処分時間は変わらないので、それぞれが刹那的に消費されることになります。その結果、作品に対する短絡的な偏見も生じやすいのではないでしょうか。
生成AIのファン同士であれば、微妙な違いを楽しむこともできるでしょう。しかし、作品を世に問うことを目指すなら、作品に独自の重みを付ける努力が必要です。それは、追加の学習データを自作して生成AIの出力過程に介入することかもしれません。あるいは、画像や音声、映像をそれぞれ生成して組み合わせるのも面白いです。
私自身は写真家として、主にポートレート撮影での構図選定や、ファッションやポーズなどのアイデア出しに画像生成AIを活用しています。生成AIへ命令を与える過程で自らのアイデアを概念的に分解し再構築する作業は、自身の芸術観や作品の方向性を明確にするのに役立っています。
これらの議論は、スナップ写真が流行するたびに起きる、倫理的な問題、肖像権やプライバシーの問題と似ています。その都度、問題が整理され、法や規制が検討され、社会と少しずつ距離を縮めていくことで普及してきました。生成AIについても同様です。
新たな可能性を最大限に利用しながらも、作品制作とどのように向き合うか。生まれた作品が何を表現し、どのような本質的な特徴を持つのか。その問いこそがいまの画像生成AIへの反発の源ではないでしょうか。
こうした問いに答えながら、あるいは常に問われていることを意識しながら、クリエイターは生成AI時代を生きていかねばならない、とふんどしを締め直す次第であります。
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