そろそろ進化にも限界? 変わりゆく「アクションカメラ」の今、各社の最新モデルからひもとく:小寺信良のIT大作戦(4/4 ページ)
9月にGoProの新モデルHero 12が登場し、2023年のアクションカムも新作が出そろったところだ。そこでアクションカメラのここ数年の歴史を振り返りつつ、今のトレンドを分析してみたい。
変質する「アクション」のシナリオ
小型で超広角レンズを備え、ド派手なスポーツシーンが撮影できることから始まったアクションカメラだが、スポーツカメラとしての進化もそろそろ限界に達しつつあり、だんだんやることがなくなってきているように感じられる。今年のGoPro Hero12とDJI Action4を見る限り、明らかに進化の袋小路へ迷い込んでいる。
もともと日本を含めたアジア圏では、激しいストリート系スポーツが育ちにくい。加えてバイクで岩山に登ったりパラシュート背負って飛び降りたりといったやんちゃ人口も、欧米に比べれば微々たるものだ。GoProは欧米を中心にこうしたスポーツの大会をスポンサードするなど振興に注力し、強固な支持基盤を築いた。スポーツ分野で他社が勝てるわけがない。
一方GoProの後追いではなく、もっと落ち着いた「街撮りオモシロカメラ」で伸ばしてきたのが、Insta360だ。もともと360度カメラは、海や山には向かない。上半分が空で下半分が岩では、面白くないからである。むしろ街撮りのほうが面白い。同社アクションカメラのサンプル映像も、街撮りの傾向が強い。進化の袋小路を突破できるのは、Insta360ではないだろうか。
アクションカメラではないが、Insta360は22年、AI認識可能な3軸ジンバルのUSBカメラ、「Insta360 Link」を登場させた。明らかに室内撮影を前提としたもので、「小型だから外に持ち出す」という概念をひっくり返した。
片や今年、スマホジンバルで知られる中国のFeiyu Techが、小型ジンバルカメラでヘッド部とモニター部が分離する「Feiyu Pocket 3」をリリースした。ジンバル+ワイヤレスモニタリングという方向性である。
水平維持だけでなく、人物フォローのためのジンバルという使い方とともに、カメラが壊れるような激しいことはしないという撮影用途が拡大した結果であろう。
もともとアクションカメラには自撮りの傾向があった。「アクションするオレカッコイイ」が撮りたかったわけだ。これが10年たち、Vlogが一定の市民権を得た今、スポーツシーン以外の「自分アピールカメラ」として、アクションカメラが使われ始めている。カメラユニットが独立し、手元でモニタリングできるという流れも、その傾向を後押ししている。
今後のトレンドは、「リモートモニタリング」がポイントになるだろう。今年GoProとDJIはそこに乗り遅れたわけだが、DJIはドローン技術で本来最も得意なところのはずだ。現在DJI Action2は専用アクセサリーを含め大幅なディスカウントが始まっており、別設計の分離型カメラが出る可能性が高まっている。次はやはり、リモートモニタリングへ行くのかもしれない。
アクションカメラは、この技術をベースにこれまでにない取り付け位置や面白いアングルをサポートする、別用途のカメラへの進化が求められてくるのではないかと思う。4Kハイフレームレートでガンガン、というより、24Pや30Pでシネマトーンへという流れも出てくるのではないだろうか。
関連記事
- バッテリー持ち2倍、「GoPro HERO12 Black」正式発表 AirPodsなどをマイクにする機能も
米GoProが、小型アクションカムの新モデル「GoPro HERO12 Black」を発表した。前モデルの性能を維持しつつバッテリー稼働時間を最大2倍に増やしている。価格は6万2800円で、同日よりは予約を開始。9月13日の発売を予定している。 - センサーを大型化したDJI「OSMO Action 4」の使い勝手は? 便利なマウントは継承
「OSMO Action」シリーズも今回で4代目となった。ただし見た目もサイズも重さも先代と同じ。ただ、レンズ部をよく見ると「1/1.3"」と書いてある。 - 実は円形の映像を撮っていた 親指サイズのウェアラブルカメラ「Insta360 Go 3」の実力は?
ちょっと太めの親指サイズという超小型なウェアラブルカメラ「Insta360 Go」の3代目が出たのである。それが「Go 3」。 - 手軽で高画質な全天球カメラ「Insta360 X3」はベストバイモデルか X2、1インチ360度版と比較した
Insta360から全天球カメラ「Xシリーズ」の新製品が登場。どのように進化しているのか、過去モデルと比較してみた。 - Insta360の新製品はWebカメラ 3軸ジンバル搭載の「Insta360 Link」を試す
数々の360度カメラやアクションカメラを発売しているInsta360がWebカメラを発売する。どのような使い勝手なのか、実際に試してみた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.