眼鏡レンズに搭載できる「ほぼ透明なイメージセンサー」 視界を邪魔せず眼球の動きを追跡:Innovative Tech
スペインの研究機関「ICFO」に所属する研究者らは、ほぼ透明なイメージセンサーを提案した研究報告を発表した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
Twitter: @shiropen2
スペインの研究機関「ICFO」に所属する研究者らが発表した論文「Semitransparent Image Sensors for Eye-Tracking Applications」は、ほぼ透明なイメージセンサーを提案した研究報告である。このセンサーは透明でありながら機能するため、眼鏡レンズやARレンズに組み込むことで、視界を遮ることなく眼球の動きを追跡するアイトラッキング技術に適していると述べられている。
視線追跡は通常、利用者の目から反射された赤外光を解析することで、目の位置や動き、瞳孔の拡大などを測定する。このための発光ダイオードや赤外線カメラは、VR/ARメガネや車のウィンドシールドの端や角に取り付けられることが多い。しかし、これによりセンサーの存在感が強調され、デバイスの軽量化が妨げられる。
この問題を解決するため、新たな研究でほぼ透明なイメージセンサーを提案する。このセンサーは透過性があるため、レンズ部分に搭載しても視界を遮ることなく機能を果たすことができる。
イメージセンサーは8×8の配列で構成。半透明のフォトディテクタ(光を検出する部分)と電極が透明な基板上に配置されている。
具体的には、グラフェンと量子ドットという2つの材料を採用している。グラフェンは極めて薄い層を持ち、電気を導く性質があるが、光の吸収は少ない。一方、量子ドットは非常に小さな半導体の結晶で、光を効果的に吸収する性質を持つ。
透明なクオーツ基板にグラフェンを堆積させた後、その上に数十ナノメートルの極薄の量子ドット層をコーティングする。この構造により、量子ドットが光を吸収し、そのエネルギーをグラフェンに伝え、電気信号に変換する。
光の吸収能力は従来のシリコンフォトディテクタよりも劣るが、吸収した光を電気信号に変換する効率は約60%と高く、一般的なシリコンフォトディテクタと同等である。このイメージセンサーは非常に感度が高いため、特定の光の波長(637nm)での微小な光量でも検出可能であり、85〜95%の光透過率を維持している。
このイメージセンサーの応用例として、眼鏡レンズ部分に取り付け視野を確保しながら眼球運動を検出する使い方が挙げられている。
Source and Image Credits: Gabriel Mercier, Emre O. Polat, Shengtai Shi, Shuchi Gupta, Gerasimos Konstantatos, Stijn Goossens, and Frank H. L. Koppens. Semitransparent Image Sensors for Eye-Tracking Applications
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