アジに寄生したアニサキスをパルス電流で“瞬殺”する技術、熊本大学がクラファン実施 「サバ、サケ、サンマにも」
加熱も冷凍もせず、魚介類に潜む寄生虫のアニサキスを“瞬殺”する──そんな技術を開発した熊本大学と福岡市の水産会社が、早期の社会実装を目指してクラウドファンディングを始めた。
加熱も冷凍もせず、魚介類に潜む寄生虫のアニサキスを“瞬殺”する──そんな技術を開発した熊本大学と福岡市の水産会社が、早期の社会実装を目指してクラウドファンディングを始めた。
熊本大学産業ナノマテリアル研究所の浪平隆男准教授と水産会社のジャパンシーフーズ(福岡県福岡市)が開発したのは、魚の切り身に瞬間的に大電力を流してアニサキスを感電死させるパルス殺虫技術。短時間のため切り身へのダメージを最小化でき、温度が上がらないため鮮度も落ちないという。
「一般的に、電気エネルギーを食品に与えるというと電子レンジを思い浮かべられ、食品が加熱されることを想像されますが、パルスパワーの持つ特徴がお刺身をほぼ加熱することなくアニサキスの無害化を可能としました。これまでに、アジに潜むアニサキスを無害化できるパルスパワーの条件が明らかになりました」(プロジェクトページより)
現在はアジのフィーレ(半身)のみに対応した装置になっているが、集めた支援金でサバやサケ、サンマなどにも適した技術条件を見つけ出す考え。新技術の水平展開で適用範囲を広げ、食中毒を減らすことが生食文化を守る手段になるとしている。
欧米では当たり前の「冷凍規制」とは?
アニサキスは、魚に寄生する直径1mm、長さ20mm程度の寄生虫で、魚を食べた人に腹痛などを伴う食中毒を引き起こすことで知られる。加熱か一度冷凍すれば食中毒は防げるため、欧米では生食用の魚は冷凍させなければならない「冷凍規制」がある。しかし日本では冷凍していない刺身に対する需要が高いため、先進国で唯一、冷凍規制を導入していない。
現在は、流通の過程で小さなアニサキスを探しては手作業で取り除いているが、それでも取りこぼしをゼロにすることは困難。年間700〜1400件ほど発生する食中毒のうち43.5%はアニサキスなど寄生虫が原因となっている(農林水産省の資料より)。
こうした状況から、浪平准教授は日本でも冷凍規制を導入する可能性があると指摘。新技術の適用範囲を広げ、社会実装を早めることが規制導入の回避につながるとみている。クラウドファンディングという、迅速に資金を集められる手段を選んだのもそのためだ。
クラウドファンディングサイト「READY FOR」のプロジェクトページでは、第一目標の400万円に対し、14日時点で257万3000円が集まっている。“第1”とあるように目標金額は3段階あり、第2目標の1000万円を超えれば他の寄生虫へ、第3目標の1600万円に達した場合は馬刺しやジビエ料理など対象食品の拡大を視野に入れている。
「将来的にはアニサキス以外の魚介類寄生虫の殺虫や、魚介類以外の寄生虫にも本技術が活用できないか模索していくことを計画しています。この技術の発展が日本のさまざまな生食文化の未来を救うと信じています」
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