スケジュールに無理? 自治体システム標準化・ガバメントクラウドに取り組む現場のホンネ 福島市の場合:ガバクラ・自治体システム標準化の行方(3/3 ページ)
スケジュール通りの進行が不安視される自治体システム標準化・ガバメントクラウド移行。現場の受け止め方を、さまざまな自治体の担当者への取材から探る。今回は、福島県福島市に話を聞いた。
「考え方は悪くないが……」 ガバクラ・システム標準化へのホンネ
──国が主導するシステム標準化とガバメントクラウドについて「性急である」「細部の検討が足りない」と批判する声も見られます。お二人は一連の施策をどう受け止めているか、感想を教えてください
蛭田 システムを標準化する考え自体は、もちろん悪い方向性ではないと思います。これまで、法改正の度に各自治体がバラバラに対応するのは効率がよくありませんでした。一度システムを標準化・共通化し、それを手直しできる方が効率的だと思います。
ただ、スケジュールがタイトなのは指摘の通りです。発表からは時間がありましたが、ベンダー側もスケジュール的に厳しいし、作業中に(標準化対象業務である税や国民保険に関する)制度改正があるとそれにも対応しなくてはいけません。
また、われわれ自治体の側も、出来上がった業務アプリをきちんと業務で使えるように検証・設定する必要があります。アプリ自体が間に合っても、それを検証・設定する期間が必要と考えると、期限は非常に厳しいというのが正直なところです。
東海林さん 標準化してクラウドベースでシステムを動かすのが、今までのやり方とは全く別物です。ちゃんとサービスを提供・運用し、業務をやっていけるかという点で多少のプレッシャーや負担を感じます。
──標準化によって期待しているプラスの効果はありますか
蛭田さん 先ほども説明しましたが、やはり法改正・制度改革に対応しやすくなる点に期待しています。標準化後は、法改正や制度改革に合わせてアプリベンダー側が新たなパッケージをリリースするので、それを使えば済むようになるという認識です。
これまでは法改正などのたびに結構なコストをかけて対応していましたが、あまり自治体負担のない形で対応できるのであれば非常に良いと思っています。
──逆に、壁になりそうなポイントがあれば教えてください
蛭田さん 法改正ではなく、福島市独自の制度の改正に新システムをどう対応させるかという不安は残ります。標準化したパッケージは原則カスタマイズができない。その中で、福島市の制度に変更があったときどのように対応していくかという問題はあります。外付けでシステムを作る必要性も出てくるかもしれない。
──現状、ガバメントクラウドとして認められているのは外資の4クラウドだけですが、日本企業が認定を得る可能性も出てきています。この動向についてどうお考えでしょうか
蛭田さん 現状がダメとは考えていません。一方で、国産クラウドが出てくるのも選択肢が増えるという意味で良いことだと思っています。国がISMAP(クラウドサービス認定制度)という厳しいルールを設けているので、その上で外資・国産を問わず選択肢が増えた方がありがたいと考えています。
関連記事
- 自治体システム標準化、タイムリミット一部緩和
自治体の業務を共通化し、システムもそれに沿ったものに移行する“自治体システム標準化”。当初は2026年3月末の完了を目指していたが、デジタル庁が方針を変更。原則としてタイムリミットは変更しないものの、システム移行の難易度が高いものについては、個別に期限を設定する。 - 始まるガバメントクラウド移行、自治体に求められるセキュリティ対策は
政府やデジタル庁が主導する「ガバメントクラウド」。すでに一部自治体が移行・利用を進めており、今後拡大する見込みだ。一方で、移行に伴う現場の混乱も予想される。特に不安が生まれるのはセキュリティだ。 - ガバメントクラウド先行導入の神戸市、手応えは? 市長に聞いた
政府の共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」を先行導入する神戸市。活用・導入の状況や、その手ごたえを市長に聞く。 - 「ガバメントクラウド」に国産IaaSが不在だったワケ さくら田中社長に聞く日本ベンダーの課題
日本政府の共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」。海外IaaSのみを採択したデジタル庁に対し「日本の産業を育成しないのか」といった声も出ている。なぜ国産IaaSはガバメントクラウドになれなかったのか、さくらインターネットの田中邦裕社長に見解を聞く。 - 水戸市・福島市長などが「自治体システム標準化」に緊急要望 期限の見直しなど求める
茨城県水戸市や福島県福島市など人口20万人以上の市町村の市長からなる中核市市長会が、政府が進める「自治体システム標準化」施策について、期限の見直しなどを求める要望書を鈴木淳司総務大臣などに提出した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.