「Google Cloudのデータ転送で課金爆死」 あるSIerの顧客事例が教訓に満ちていた 失敗の原因は
円安の今こそ怖い“課金爆死”。あるSIerの顧客事例が教訓に満ちていたので、紹介する。
円安の続く今日この頃。ITmedia NEWSではたびたび触れているが、クラウドサービスの(実質的な)コスト増がさまざまな組織の頭を悩ませている。設定ミスや見落としによる、予期しないコスト超過の危険性も高まる一方だ。
しかし、ミスは常に起こり得る。Google Cloudに特化したSIerのG-gen(東京都新宿区)は11月24日、ちょっとした見落としにより、想定を超えるコストを発生させてしまった顧客の事例を、注意喚起として自社ブログで公開した。その内容が興味深かったので紹介する。
なお、事例に登場する数値には、「顧客の事情」(G-gen)により一部事実と異なるものが含まれているという。ITmedia NEWSではG-genに改めて確認したが、正確な数字は開示できないとのことだったので、改変後の数字をそのまま掲載する。
事件は「Cloud Storage」で起こった
事件は「Google Drive内のファイル6TBを、ストレージサービス『Cloud Storage』にバックアップする」作業中に起こった。G-genの顧客は、異なるストレージ間でデータの移行が可能な「Storage Transfer Service」を使って移行する計画だった。
G-genによれば、当時Cloud Storageの利用料は、データ容量1GB当たり月0.023ドル。6TB分を利用する場合、約2万円がかかる計算だ。G-genの顧客も同様の見立てで移行を進めたという。
しかし、この試算に誤りがあった。Cloud Storageの料金はデータ容量だけで決まらなかったのだ。Cloud Storageはデータ容量に加え、データの読み込み・書き込み回数に応じても料金が発生する。
そして、Google Driveにあったデータは、サイズこそ6TBだったが、ファイル数は約8億件あった。Cloud Storageへの書き込みにかかる料金は、1000回当たり0.005ドルなので、60万円ほどの料金が発生してしまったという。
見立てに誤りがあった原因は、引継ぎの不足だ。実は、移行を担当した人物は入社2カ月ほど。前任者からファイルサイズについては話を聞いていたものの、ファイル数については共有されていなかったという。
今回の事例について、G-genは「Cloud Storageの利用料金はデータ容量だけでなくリクエストの回数による課金も発生することを念頭に置いて利用することが大切だと、改めて実感する」としており、同様のミスへの注意喚起も兼ねて、顧客に許可を得た上で詳細を公開したという。
併せてG-genは、意図しない課金があった場合、救済措置を得られる手段がGoogle Cloudにあることも案内。必ず対応を受けられるわけではないものの、同様の事態があった場合の選択肢として紹介している。
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