ボールベアリングを使ったトラックボールはなぜ心地よいのか ベアリング製造元に聞く:分かりにくいけれど面白いモノたち(5/5 ページ)
エレコムのトラックボール「IST(イスト)」シリーズにはボールベアリングを採用したモデルがあり、その操作はとても心地よい。そのボールベアリングを供給しているのが、ミネベアミツミというメーカーだ。
確かに、実際にボールベアリングを回している感触があるトラックボールの場合、その振動レベルは操作性に直結する。指先に伝わるわずかな振動が筆者は「機械を操作している」感があって好きだし、そのせいかカーソルを見失いにくいと感じている。しかし、人工ルビーのタイプはそういった振動は全く感じない。だからこそヌルッとした滑らかな感触があり、そちらの方が好きだという人も多いと思う。もちろん音もしない。
この振動を気にならない程度に抑えることと、回転の精度を動かしやすく止めやすいレベルに調整することが、ボールベアリングを使ったトラックボールの性能に直結するということだろう。現状、他に比較対象がないため、このボールベアリングが実際、どのくらい凄いのか、具体的に語ることはできない。
ただ、エレコムが既製品のボールベアリングで試して上手くいかず、ミネベアミツミに相談したという経緯は、ただボールベアリングを使えば良いという話ではないことの証明でもあろう。
さらに、ボールベアリング支持のトラックボールの利点としてメンテナンスフリーという点もある。「手で回すわけで、モーターに比べたら回転数も違うし、長くスムーズに使い続けられると思います」と油井さんも太鼓判。これはありがたい。
ただ、ボールベアリングの性能とは別に、実際に指で回すトラックボール自体の精度は何となく気になる。実際、ルビー支持のトラックボールとボールベアリング支持のトラックボールのボールを入れ替えると、微妙に操作感が変わった。つまり、このボールの精度がさらに良くなれば、トラックボールの使い勝手はさらに良くなるのではないかと思うのだが、残念ながら、こんな大きなトラックボールはミネベアミツミでは作っていない。何にせよ、真球性の高い高精度の球を作るというのは、相当に難しいのだ。
ともあれ、エレコムISTシリーズのボールベアリングタイプは使いやすい。文字を一文字単位で選択する作業が、マウスよりもはるかに楽なので、執筆や推敲がとてもはかどる。親指でボールを操作するのは慣れが必要だが、マウスを実際に動かすことに比べたら運動量は遥かに小さいし、なんといっても握る必要がないのだ。
まだ、ポインティングデバイス市場でのトラックボールのシェアは10%弱といったところだそうで、いろんな製品から選ぶというほどの選択肢もない。今回のボールベアリングの採用でトラックボール市場が盛り上がるといいなあ。
【訂正:2023年12月18日9時50分更新 ※表記の誤りを修正しました】
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