人が足りない? 自治体システム標準化・ガバメントクラウドに取り組む現場のホンネ 尼崎市の場合:ガバクラ・自治体システム標準化の行方(2/3 ページ)
さまざまな自治体の担当者に取材し、システム標準化に取り組む人の“生の声”を探る。第3回となる今回は、兵庫県尼崎市の岡本央さん(デジタル推進課)に話を聞いた。
尼崎市のシステム標準化、進捗は?
──尼崎市のシステム標準化について、進捗を教えてください
岡本さん(以下、敬称略) 20業務のうち半分以上を既存のシステムベンダーに、残りを新たなシステムベンダー複数社に頼む形で進めています。進捗としては、一部の対象業務では、既存業務と標準化した後のシステムをすり合わせ、整合性を検討する作業「フィット&ギャップ」が終わった段階です。これらの業務については、データの移行作業や、ガバメントクラウド上でのシステム構築に差し掛かっており、2025年1月には完了する予定です。
それ以外の業務については26年1月から3月中の移行を目指しています。ただし、このうち一部の業務については、移行事業者が見つからず、移行困難システムになっています。既存システムベンダーがこれ以上は標準化に対応しないとのことだったので、他のベンダーに募集をかけたのですが、応募する事業者がいませんでした。国には報告を済ませています。
──尼崎市では、どの程度の規模で標準化に取り組んでいるのでしょうか
岡本 20業務を所管する各課のシステム担当者1〜2人がそれぞれシステムベンダーとのやりとりなどを担当し、デジタル推進課がその進行管理をしています。
ただ、システム担当者の方から相談があればデジタル推進課が出張ることもあります。また、デジタル推進課は別途コンサルタントとも契約しているので、各所管課に困りごとがあった時に対応してもらっています。
──ガバメントクラウドのうち、どのクラウドサービスを使うかすでに決まっていますか
岡本 基本的にはAWSです。ただし、一部はAzureでないと対応できないものもあるので、マルチクラウドになる予定です。
──システム標準化にかかる予算を教えてください
岡本 夏にデジタル庁への申し入れをした段階では、移行費用として総額32億円ほどを見込んでいました。補助金で23年度と24年度にかかる移行費用までは賄えると見込んでいます。25年度の費用についてはまだ読めていませんが、河野大臣の言葉を信じれば、補助してくれるだろうと思っています。
──政府はシステム標準化とガバメントクラウドへの移行により、18年度比で運用経費3割削減を見込むとしています。実現可能でしょうか
岡本 運用費用については、従量課金(クラウドの利用料)も加わってきますので、まだ読み切れていない状態ですが、現状のシステム運用費より上がるだろうと考えています。
国からはやりようによっては安くできると聞いていますが、まだそういった情報をキャッチアップできていません。ただ、国が各都道府県に1人ずつ、担当者をつけてくれているので、その人物とコミュニケーションしながら値段交渉などの手段を模索しようと動いています。
──システム標準化によって現場の負担は増えていますか
岡本 人材が足りないのは明らかです。ガバメントクラウドに移行するということはAWSに移行することなので、AWSの知識がないとベンダーに太刀打ちできません。一方で、市の担当者はAWSの専門家ではありません。
あくまで現場の業務の専門家ですし、現状のシステムの面倒も見なくてはいけないので、システムベンダーとのやりとりには難しいものがあります。また、進捗管理側の人間も足りていません。
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