庵野氏がSlackフル活用、Confluenceには100GBの設定資料――「シン・エヴァ」制作支えたITシステム(4/4 ページ)
「自社内にシステム部があるアニメ制作会社は2017年当時、珍しい方だと感じていました」――庵野秀明氏が率いるカラーは、IT化で制作効率を高めている映像スタジオの一つだ。
Slackの「参考資料」チャンネルには庵野氏が大量投稿
社内コミュニケーションにはSlackを活用している。作品の資料を集める「参考資料チャンネル」は庵野氏御用達。庵野氏は日常的に大量の資料を集め続けており、参考資料チャンネルに投稿し続けていたという。
シン・エヴァには、08年・09年に庵野氏が個人的に撮った写真も多く使われていたという。庵野氏が投稿した資料には、「沖縄県ですでに閉店したミリタリーショップの特定のページの画像」など、極めてマニアックなものも多かった。こうした資料はプリヴィズ制作などにも活用されている。
参考資料以外の庵野氏とのオンラインコミュニケーションはメールベースだったが、Slackの社内掲示板チャンネルにスタッフが投稿した「このたび結婚しました」という文言に、庵野氏が「おめでとうございます」の絵文字付けるなど、日常的な交流もあったという。
AIツールを使い始めているクリエイターも
庵野氏はいわば「オタク」的クリエイターで、日常で当たり前のように資料を収集し、知識を仕入れている。成田氏はJAXA出身だが、宇宙開発について、庵野氏や鶴巻氏のほうが詳しいこともあったと話す。
「彼らは小学生のころからSF作品を嗜み、好奇心を持って調べてきた人。庵野さんからは『このセリフはラグランジュ5と3のどっちがいい?』と聞かれたこともあります。ちょっと待って……と」(成田氏)
また、カラーの一部のクリエイターは、生成AIツールを独自に調べて使い始めているそうだ。デジタル作画スタッフだけでなく、アニメクリエイターはみんな好奇心旺盛なので、新しいツールに抵抗がなく、積極的に使おうとする傾向があるという。
「プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン」に書かれた庵野氏インタビューの締めくくりはAI評だ。AIを映画制作にどう活用できるか、AIに脚本は書けるのか。AIが進化したときに残る監督の役割は――。その答えを知りたい方は書籍を手に取ってみてほしい。
関連記事
- 「ちゃぶ台返しはしない」 シン・エヴァ制作進行が見た“マネジャー庵野秀明”の姿(後編)
「庵野さんは“ちゃぶ台返し”はしない」。シン・エヴァの「Avant2パート」「Aパート」で制作進行を担当した成田和優氏は言う。成田氏へのインタビューから、マネジャーとしての庵野秀明をひもといていく。 - 「15人のはんこリレー」vs.「庵野秀明との対話」 JAXAからカラーに移った、とある新人制作進行の話(前編)
JAXAからアニメの制作進行に転向するという異色の経歴の人物がいる。成田和優氏だ。なぜ職を移ったのか。両者の違いと共通点は。シン・エヴァの制作を通じて感じた、アニメ業界のマネジメントとは。「プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン」の著者でもある成田氏に話を聞いた。 - 「シン・エヴァ」制作の全て、カラーが書籍化 大プロジェクトのマネジメントに迫る
映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の制作実態や関係者へのインタビューを掲載した書籍「プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン」が5月下旬に発売。価格は1760円。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.