東京創元社が翻訳者に謝罪 無料電子ブックで訳文を無断使用 原因はモラハラか
東京創元社は18日、無料電子書籍「〈ワニ町〉シリーズ著者公認ガイドブック」に掲載した本編の無料公開範囲を事前に翻訳者に伝えていなかったとして謝罪した。
「創元推理文庫」などで知られる出版社・東京創元社は3月18日、無料電子書籍「〈ワニ町〉シリーズ著者公認ガイドブック」に掲載した小説本編の無料公開範囲を翻訳者の島村浩子さんに伝えていなかったとして謝罪した。同ガイドブックは1月下旬に配信を停止している。
ガイドブックは、米国の人気ミステリー作家・ジャナ・デリオン氏による「ワニ町シリーズ」(通称)を紹介する本。最新刊「幸運には逆らうな」の宣伝を兼ねて2023年8月に配信を始めた。
この中で東京創元社は、第1作「ワニの町へ来たスパイ」(創元推理文庫刊)を“試し読み”として第4章まで無料公開していた。通常の“試し読み”は第1章のみだ。デリオン氏の許可は得ていたものの、同社は翻訳を手がけた島村浩子さんに具体的な公開範囲を伝えていなかった。
島村さんは今年1月、「無料電子ブックにわたしの訳文が無断で大量に使用されてしまいました」というブログを公開。ある編集者から度重なるモラルハラスメントを受けていたこと、問題の電子ブックを企画を作成したのは同じ編集者だったことなどを明かした。役員に抗議のメールを送り、正式な謝罪と補償を求めたが、話し合いはなかなか進まなかった。
ブログの中で島村さんは、このようなことが起こる理由について、こう指摘している。「ひとつには一冊の翻訳書が刊行されるまでに、訳者が『無料で』引き受けるのが『慣例』になっている作業がいくつかあることが関係しているとわたしは思います。無料で仕事をさせることができる相手に、『敬意』というものが薄れていくのは自然ではないでしょうか」。
東京創元社は18日、「ひとえに弊社の確認不足によるものであり、島村先生にご迷惑、ご心痛をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」と謝罪した。これを受け、島村さんはXアカウントで「今回の和解については、SNSで関心を持ってくださったみなさまが見守ってくださったからこそと思っています」と報告。金銭的な補償も受けられたという。
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