1カ月で100万本売れるひとり用ポーカーの正体 “射幸心煽られ放題”な新作ゲーム「Balatro」とは(1/2 ページ)
いま、PCやゲーム機で遊べるひとり用ポーカーが売れている。その正体は。
いま、PCやゲーム機で遊べるポーカーが売れている。しかも報酬で射幸心をあおるギャンブルではなく、一人で黙々と遊ぶ“ひとりポーカー”だ。2月に発売されたとある“ひとりポーカー”は、「中毒になる」などとしてゲーム実況やSNSで話題に。3月19日には100万セールスを突破した。
100万本売れたポーカーゲーム「Balatro」とは
ゲームの名前は「Balatro」。カナダのゲーム開発者が作った作品で、提供は英国のゲームパブリッシャーPlaystackが手掛ける。提供プラットフォームはSteam(Windows/Mac OS)、Nintendo Switch、PlayStation 4、PlayStation 5、Xbox One、Xbox Series X|Sで、価格は1700円前後だ。日本語にも対応しているが、Switch版は日本での提供を一時停止中。ゲーム媒体各社の報道によればレーティングが原因という。冒頭の「100万セールス」は各プラットフォーム累計の販売本数だ。
さてこのBalatro、お察しの通りただのポーカーではなく、プレイヤーを“沼に落とす”アレンジが加えられている。簡単に言うと、役を作るとスコアとしてバカデカい数字が出るので気持ちよくなれるポーカーなのだ。
詳しく説明する。Balatroは、賭けた金やポイントを巡り、ブラフやイカサマによる駆け引きを楽しむゲームではない(そもそも対戦相手がいない)。52枚のトランプ(デッキ)からランダムに選ばれた10枚弱の手札のうち、1〜5枚を選んで場に出し、「ワンペア」「ツーペア」などの役を作ることで得られるスコアを最大化するゲームだ。
スコアは「役ごとに設定されている初期値+カードに書かれている数字の和」×「役ごとに設定されている倍率」で算出する。例えばハートの5とスペードの5でワンペアを作った場合、初期値(10)とカードにある数字の和は20。倍率は2倍で、40点のスコアが得られる。もちろんフルハウスやフォーカードなど、より良い役は倍率なども高い。
ゲームではステージごとにスコアのノルマが課されており、3〜5回程度のスコア算出でノルマの達成を求められる。例えば第1ステージでは300点を出さねばならない。手札は最大5枚まで引き直しができるが、1ステージにつき4〜5回程度までと回数制限がある。
そしてこのゲームのキモとなるのが、スコア算出に使う数字を増やせる成長要素だ。先ほどスコア算出の計算式を説明したが、これはあくまで初期値。ステージクリアによって得られるポイントを使って、この倍率や初期値を強化できる。
代表例はスコアに恒常的な影響を与える「ジョーカー」だ。ジョーカーは各ステージのクリア後にアクセスできるショップなどで入手でき、種類ごとに効果が異なる。例えばシンプルに倍率を常に+4したり、スペードのカードを場に出すごとに倍率を上げたり、特定の役のときだけ初期値を+50したりできる。その種類は150以上あり効果も多種多様だ。
つまりジョーカーを使うと、先ほど説明した計算式が「役ごとに設定されている初期値+カードに書かれている数字の和+ジョーカーによるボーナス」×「役ごとに設定されている倍率+ジョーカーによるボーナス」などになる。
そしてジョーカーは最大5枚まで(これもジョーカーの効果で増やせるが)あり、それぞれの効果を組み合わせられる。そうするとどうなるか。スコアが数万とか数十万とかとんでもない数字になる。スコア算出時には軽快な音楽やアニメーションなどの演出で盛り上げるため、とにかく気持ちいい。ジョーカーの組み合わせによっては「フルハウスより(スコアが)強いツーペア」とかも出てきて愉快だ。
中毒性が尋常じゃない 気づいたら経過した10時間
強化要素は他にもある。トランプのカードは後から増やせるし「これを出したら倍率に+10」「これが手札にあったらスコア1.5倍」みたいな特性も付与できる。また役が持つスコアの初期値や倍率を強化する「惑星カード」や、「スペードの5をハートのクイーンに変える」「カードのスートを5枚までダイヤにする」といった効果が使える「タロットカード」もある。やろうと思えば「クイーンめっちゃあるからスリーカードとフォーカード出しやすいデッキ」とかを作れるわけだ。
巧みなのが、これらの強化要素が手に入るかもランダムな点。ショップは全てのカードが売っているわけではない。ジョーカーは数枚ずつしかショップに並ばないし、タロットカードや惑星カードはトレーディングカードゲームのような「パック」をポイントで買って手に入れる仕組みだ。詳細は省くが他にも強化のために使える要素は複数あり、それらを適宜組み合わせればスコアはどんどん大きくなる。
一方で、求められるスコアはステージごとにどんどん高くなっていくし、中には「スペードが使えなくなる」みたいな縛りを課してくる場面もある。そういう局面を想定したり、時には「ハートだけは縛るな……!」と祈ったりしつつ、ポイントをやりくりしながら、デッキを改造し、スコアを大きくしていく。でもスコアが達成できなくなったら、強化はリセットされ、最初からやり直し──というのがBalatroのおおまかな流れだ。
とはいえスコアを達成できなくてもボタン一つでリトライできるので、やり直しは気軽だ。しかもプレイごとに新しいジョーカーが使えるようになったり、新しいデッキ(最初から絵札がない、カードを場に出せる回数が少ない代わりにジョーカーが多く持てる)がアンロックされたりするので、ついついもう1回やりたくなってしまう。短ければ数分で1プレイが終わるし、長くても大抵20〜30分だ。
……そう、ここまでの説明でお察しの通り、このゲームは中毒性が尋常じゃない。手札を引くとき、ジョーカーや惑星カードを選ぶとき、それを組み合わせて作ったデッキが想定通りの効果を発揮したとき。あらゆる行動が“ガチャ”になっている。演出も軽快かつちょっとサイケで、ストレスがないのでクリックやボタンを押す手が止まらない。脳をめちゃめちゃにハックされている自覚があるにもかかわらず、プレイが止められないのだ。
SNSでも同様の声が多く見られる。ゲーム実況動画では頻繁に「中毒」という見出しが用いられているし、Xでは「ギャンブルにハマる人の気持ちが分かった気がする」といった意見もあった。筆者もおおむね同意見だ。ちょっと試してみようかなと思ったら10時間たっていたが、あと数十時間は余裕で遊べると思う。より難易度を高くもできるようなので、遊びつくそうと思ったらずっと遊べるだろう。
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