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社会制度のバグ? 本人確認の穴を突いたマイナンバー過信の新手口とは小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)

いわゆる振り込め詐欺の手口は、いつの時代にも手を替え品を替え新しい手法が開発され続けてきているが、今年3月にはこれまで聞いたことがない手口の詐欺事件が発覚した。女性のマイナンバーカードの情報を元にネットバンキング口座を無断で作り、そこに本人に現金1400万円を振り込ませたという。

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塞ぐべき穴はどこか

 今回のような事件を防止するために仕組みとして打てる手としては、ネットバンキング口座開設時の、本人確認の方法を変える必要がある。オンラインだけで簡単に開設できるのがウリではあるが、どうしても本人確認が甘くなる。

 そこを補完するためにマイナンバーカードに頼ったのだろうが、オンライン上でマイナンバーカードが効力を発するのは、カードとしての物理的な存在ではなく、内蔵されている証明書データのほうである。マイナンバーカードを使うなら、やはりマイナポータルのように、物理カードの接触と暗証番号の組み合わせで電子証明書が取り出だせるような仕組みの導入は避けられないだろう。

 マイナポータルも別のサイトに飛ばされる度に何度も暗証番号入れさせやがってしつこいんだよと不評だが、こうした「何度も無駄に確認」みたいなハードルが、詐欺に気づくきっかけになるかもしれない。

 さらにネットバンキング企業は、現在保有する口座に対して一斉に本人確認を行なうといった措置は必要だろう。いくら本人の情報を元に口座が作られたとは言っても、当の本人が知らないというなら架空口座である。あそこは詐欺の踏み台パラダイスという評判が立てば、銀行としての信用は下がる。

 ATMからの現金引き出しには、1日の引き出しの限度額が設定されている。連日限度額いっぱいを引き出していれば、それこそ口座が凍結されてしまう可能性があるため、この事件のような1400万円もの金を現金化するには、それなりに大変なようにはなっている。しかしこの口座から別の複数の架空口座に送金し、それぞれから1日上限の50万円ずつ日にちを空けながら引き出すなどすれば、引き出しは可能である。

 これの問題は、別の架空口座を作られてしまった本人が、犯人として捜査対象になることである。ある日突然、振り込め詐欺の犯人として捜査員が踏み込んでくるといった事態になりかねない。

 すでに同様の手口で、架空口座は作られているかもしれない。もし身近に高齢者がいるなら、ビデオ通話でマイナンバーカードを提示した事はないか、確認してみてはどうだろうか。

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