“岸田政権のスタートアップ支援”を分かりやすく整理する 「5か年計画」開始から1年4カ月、現状は(1/3 ページ)
スタートアップ5か年計画が何を目指しており、どんな施策が実施されているのか。あらためて整理する。
日本のスタートアップエコシステムを強化する「スタートアップ育成5か年計画」が2022年11月に閣議決定されてから、1年4カ月がたった。計画では、2027年までの5年間でスタートアップへの投資額を8000億円規模から10兆円規模に拡大し、ユニコーン(時価総額10億ドル以上の未上場企業)を100社、スタートアップを10万社創出することを目指している。
一方、スタートアップの育成や支援に向けた施策は多岐にわたり、なかなか全容が把握しにくい。あらためて、この5か年計画が何を目指しており、どんな施策が実施されているのか、振り返ってみたい。
スタートアップのための環境整備で持続的な成長を目指す
スタートアップ育成5か年計画は、岸田内閣の「新しい資本主義」政策の中で、国内投資活性化施策のひとつとして掲げられた。新しい技術やビジネスモデルでイノベーションをけん引するスタートアップは、経済成長のドライバーであり、将来の所得や財政を支える新たな担い手といえる。スタートアップの成長により、雇用創出や国際競争力の強化、経済成長が期待されている。
しかし起業を望ましい職業選択と考える人の割合は高くない。内閣官房の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2023改訂版」によれば、中国で79%、米国で68%であるのに対し、日本では25%と先進国・主要国の中で最も低い水準にある。また企業の参入率・退出率の平均(創造的破壊指標)が高い国ほど、国民1人当たりの経済成長率が高いというデータがあるのだが、日本は開業率・廃業率ともに低い水準にとどまっている。
スタートアップ育成5か年計画では、起業家になりたい人を増やし、初めての起業と再チャレンジのハードルを下げ、スタートアップが成長できる環境を整備。これにより、新たな産業構造への転換を進め、日本経済の持続的な成長を確保することを目的とする。
計画では「スタートアップは、新しい技術やアイデアにより社会課題をスピード感を持って解決していく存在であると同時に、市場に新たな刺激を与えることで市場の活性化や既存企業の生産性向上をもたらす」としている。一方で「昨今の世界の社会・経済情勢の急速な変化により、スタートアップをめぐる環境は厳しさを増している」と政策的対応の重要性を強調する。
スタートアップ創出に関する支援施策関連予算は、2022年度補正予算で約1兆円、23年度補正予算で約2300億円(関連事業総額約1兆円の内数)が計上され、24年度当初で約500億円(関連事業総額約1000億円の内数)が見込まれている。
スタートアップ育成5か年計画 3つの柱と具体的施策
スタートアップ育成5か年計画は、以下の3つの柱を中心に進められている。
- スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築
優れたアイデア・技術を持つ若い人材の発掘・育成のため、ストックオプションなどに関する環境整備、国内外のメンターや教育機関を活用した実践的な起業家育成、人材の海外派遣研修などを実施。起業を担う人材の育成や人材のグローバルネットワークの構築も進めている。
- スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化
公的資本を含む資金供給の拡大を促すため、国内のベンチャーキャピタル(VC)の育成に加え、海外投資家・VCの呼び込みを図る。スタートアップに対する公共調達の拡大なども推進。特に、科学的な発見によって社会に影響を及ぼす「ディープテック」系スタートアップを中心とした事業展開や出口戦略の多様化も進める。
- オープンイノベーションの推進
オープンイノベーション促進税制などスタートアップと連携する場合にかかる税金の優遇措置や、副業・兼業禁止の見直しによる人材移動の円滑化など、大企業とスタートアップが連携し、新しい発想が生まれやすい環境をつくる。
これまでに実施された、あるいは実施が検討されている主な支援施策は以下の通りだ。
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