“岸田政権のスタートアップ支援”を分かりやすく整理する 「5か年計画」開始から1年4カ月、現状は(3/3 ページ)
スタートアップ5か年計画が何を目指しており、どんな施策が実施されているのか。あらためて整理する。
欧米と比べ、依然として低水準のスタートアップ投資
日本のスタートアップの資金調達額は22年、過去最高の9664億円となったが、23年はこれを下回る8500億円程度となる見込みで、欧米諸国と比較すると依然として低い水準にある。23年は欧州・米国ともに投資が低調で、それぞれ2021年のおよそ半分にとどまっているが、それでも米国では1710億ドル(約25兆8925億円)、欧州は571億ユーロ(約9兆3925億円)となっている(調査会社の米Pitchbook調べ)。
「5年で投資額10兆円規模」を絵に描いた餅に終わらせないためには、官民ともにより一層の投資促進と、実際にスタートアップが成長できるための支援、制度整備が欠かせない。
日本では、始めから海外市場へ展開するのではなく、国内市場に注力するスタートアップが多い。事業ドメインにもよるが、国や地域独自の法規制が強い医療や金融などの領域を除けば、最初から大きな規模が狙えるグローバル市場を念頭に成長を目指したほうがよいだろう。
国内ユニコーン数は2023年時点で7社と、目標の100社にはほど遠い。時価総額10億ドル規模の未上場企業を多数創出するためには、今までの小さな成功で満足するやり方だけではなく、失敗しても大きな成功を狙いに行く必要がある。
となると、スタートアップの「多産多死」も経験しなければならないだろうし、スピンオフやカーブアウトも含めて起業経験者が再チャレンジしやすい環境も欠かせない。そのベースとなるのは、十分な成長資金の供給と起業経験者や有識者による起業家への支援だ。
そもそも起業を望ましい職業選択と考える人の割合が先進国・主要国の中で最も低い水準にあることは、それだけでも日本で起業家を数多く生み出すための障壁となる。10年前と比べれば「スタートアップ」という言葉は、当たり前に使われるようになってきた。しかし、日本のスタートアップとそのエコシステムをより強く大きくするためには、5か年計画にとどまらず、官民双方からの多面的な支援と国民全体の理解が不可欠といえる。
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