津波の高さを海底光ファイバーの歪みから推定できる可能性 JAMSTECが公表
JAMSTECは7日、通信用に海底に張り巡らされた光ファイバーの歪みを計測することで、地震などに伴う津波の高さを算出できる可能性があると公表した。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)は6月7日、通信用に海底に張り巡らされた光ファイバーの歪みを計測することで、地震などに伴う津波の高さを算出できる可能性があると公表した。海底光ケーブルデータを用いた防災研究に大きく貢献する研究成果だという。
光ファイバーを数mから数十m間隔のチャンネルに分割し、それぞれ歪みを計測する「分散型音響センシング」(Distributed Acoustic Sensing、以下DAS)と呼ばれる観測技術を発展させる研究成果。DASは近年、光ファイバーを敷設した海底を“線”で観測できる地震計センサーとして注目を集めているが、今後は津波の高さを測定する水圧計の代わりにもなるかもしれない。
きっかけは2023年10月9日に発生した鳥島近海の津波だった。JAMSTECは、南海トラフ域のスロー地震観測のため、室戸沖の海底光ファイバーケーブルでDAS観測を行っていたため、津波の発生時に沖合約60kmから沿岸付近まで、津波が伝播する様子を捉えることに成功した。
また、近くにDONET(地震・津波観測監視システム)の水圧計群があり、そのデータと比較してDASが津波の伝播に対応する変化を捉えられることが分かった。ただし、歪みデータが津波伝播の何を反映しているのか分からなかったため、JAMSTECは歪みの要因が、1)津波電波に伴う水圧変化、2)水圧変化による海底の変形であると仮定して定量評価。その結果、「あらかじめ光ファイバーと海底の物性が分かっていれば、DASの歪みデータを津波の高さに換算できる」ことが分かったという。
JAMSTECはDAS観測について、「将来的にこれまでの海底観測より安価で多目的な観測に活用できる可能性がある」と指摘。現在は、室戸沖で光ファイバー下の物性推定を進めている。
今回の論文は、6月6日付で「Geophysical Research Letters」に掲載された。
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