今後どうなる? 作った電気がムダになる再エネの「出力制御」 解決策は?:小寺信良のIT大作戦(4/4 ページ)
今年もまた、再エネでもめる時期が近づいて来た。2023年は、太陽光発電した電力が使い切れず、ソーラー発電事業者に無駄に電気を捨てさせるという「出力制御」が過去最高を記録したのも記憶に新しいところだ。
「家庭用大型蓄電池」が日本の現実解?
個人的にはそうした固定設備ではなく、家庭用大型蓄電池のほうが未来があるのではないかと思っている。2023年には、チリウムイオン電池を用いた蓄電設備の容量増加に対応すべく、消防関連法令が改正された。実質的に消防への届け出が不要な容量が約2倍に緩和された格好だ。
例えば24年1月に登場したEcoFlowの「DELTA Pro Ultra」は、固定買い取り制度(FIT)が終了した家庭向けのポータブルバッテリーで、エクストラバッテリー5個連結すると、最大容量は30kWhにもなる。改正された関連法令の基準でも消防への届け出が必要な容量だが、実際には届け出は不要である。
なぜならば、「ポータブル」だからだ。上記の届け出が必要は蓄電池設備とは、固定式蓄電池のことなのである。固定式であれば、津波や洪水といった水没事故から逃げられない。だがポータブルなら、外して持って逃げろという話なのである。
なんだかインチキ臭い話のように聞こえるが、例えばEV車のバッテリー容量はだいたい71.4kWhぐらいあり、「DELTA Pro Ultra」の2倍以上ある。だがEV車購入時に消防への届け出がいらないのは、固定されていないからである。一方EV車への急速充電設備は、届け出が必要である。固定されているからだ。
EcoFlowのバッテリーは、BluetoothとWi-Fiに対応しており、スマホアプリから遠隔操作が可能だ。例えば決まった時間に充電・放電するといったスケジュールが決められる。
こうした機能は、系統電力の需給バランスと連動することも可能だろう。すでに電力会社では、需給バランスを平たん化する取り組みとして、余剰電力を使ったとき、電力逼迫(ひっぱく)時に節電したときにポイントがたまるサービスを展開している。
こうした施策は、急に電気を使え、使うなといわれても生活サイクルは変えられないとして、効果を疑問視する声もある。だがバッテリーへの充放電を連動させれば、無理に電気を使ったり節電したりする必要もない。リモートでバッテリーを動かしているだけでポイントがたまるわけである。
現在はまだ、双方のAPIが整備されていないため自動化ができていないが、要するに系統電力の情報とバッテリーの制御系の両方を見比べる仕組みがあれば済む話である。電力会社や企業がやらなくても、消費者側が自分で開発できる。そうした民間のパワーを使った方が、国の施策を待っているより全然早いのではないか。
据え置き型の家庭用蓄電池は100〜200万円と高額なので、導入に補助金が出るケースもあるが、審査書類が複雑で、自分で出せる人は少ない。別途行政書士などにお金を払って依頼するケースが多いだろう。また入金までに10カ月前後待たされた例もある。
一方ポータブルバッテリーは、補助金は出ないがそもそも100万円もしない。この5月に発売した中型のEco Flow「DELTA Pro 3」は、単体で約54万円である。
出力制御に対する政府の施策が効果を発揮するまで、まだ数年はかかる。その前に個人でやれることを探してやり始めるのも、1つの解決方法だろう。
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