全生命の共通祖先「LUCA」、地球形成からわずか約3億年後に誕生していた? 英国などの研究者らが発表:Innovative Tech
英ブリストル大学などに所属する研究者らは、全生命の共通祖先「LUCA」(Last Universal Common Ancestor)に関する新たな研究報告を発表した。
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このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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英ブリストル大学などに所属する研究者らが発表した論文「The nature of the last universal common ancestor and its impact on the early Earth system」は、全生命の共通祖先「LUCA」(Last Universal Common Ancestor)に関する新たな研究報告である。
地球上の全ての生命は、最初の共通祖先「LUCA」にその起源をたどれると考えられている。このLUCAについて、新たな研究結果が発表され、生命の起源に関する従来の理解に大きな変更を迫る可能性が出てきた。
研究チームは、現在地球上に存在する主要な生命の系統に共通して見られる遺伝子を詳細に分析し、LUCAが保有していた可能性のある遺伝子を推定するという手法を用いた。
この研究で特に注目すべき点は、LUCAの推定生存時期と遺伝子の数である。研究チームの複雑なモデルによると、LUCAは約42億年前(40.9〜43.3億年前の範囲)に生存していたと推定される。これは地球の形成(約45億年前)からわずか3億年後であり、従来の推定よりもはるかに早い時期である。この年代推定は、従来の化石記録に基づく方法よりも信頼性が高いとされる。
また、LUCAは2.75Mb(2.49〜2.99Mb)のゲノムを持ち、約2657(2451〜2855)のタンパク質コード遺伝子を持っていたと推定できた。この数字は、以前の研究で示された推定値を大幅に上回っており、現代の原核生物に匹敵する規模。LUCAが想像以上に複雑な生物であった可能性を示している。
LUCAの代謝能力については、酸素を必要としない嫌気性のアセトゲンであったと推測される。Wood-Ljungdahl経路を用いて二酸化炭素と水素から酢酸を生成する経路を用いて炭素固定を行っていたと考えられ、これは初期地球の無酸素環境に適応した代謝様式だったといえる。
興味深いのは、LUCAの生態学的な位置付けである。従来、LUCAは孤立した存在と考えられていたが、この研究ではすでに確立された生態系の一部であったと推測している。LUCAの代謝活動が他の微生物の生存環境を作り出し、多様な生態系の形成に貢献していたと考えられる。
初期の生態系は、火山活動や岩石と水の反応によって供給される水素を主なエネルギー源としていた。大気中での光化学反応による水素のリサイクルが、この生態系の生産性を支えていたと考えられる。
この生態系は、微生物が水素を利用してメタンを生成し、そのメタンが大気中で光化学反応により再び水素に変換され、その水素を微生物が利用するという循環によって維持していたと考えられる。このサイクルにより、初期の生態系は安定して存続できた。
さらに、研究チームの推定によると、LUCAは紫外線ダメージから身を守る遺伝子を持っていたと考えられ、LUCAがウイルスと戦うための細菌防御システムの原始的なバージョンを持っていたことも示唆されている。
Source and Image Credits: Moody, E.R.R., Alvarez-Carretero, S., Mahendrarajah, T.A. et al. The nature of the last universal common ancestor and its impact on the early Earth system. Nat Ecol Evol(2024). https://doi.org/10.1038/s41559-024-02461-1
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