人と犬の目が合うとき、脳が同期する──中国チームが発表 ビーグルとの交流時の脳波を計測:Innovative Tech
中国科学院などに所属する研究者らは、犬と人間が社会的に交流している際の脳波を同時に測定し、両者の間に神経活動の同期が生じることを調査した研究報告を発表した。
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このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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中国科学院などに所属する研究者らが発表した「Disrupted Human?Dog Interbrain Neural Coupling in Autism-Associated Shank3 Mutant Dogs」は、犬と人間が社会的に交流している際の脳波を同時に測定し、両者の間に神経活動の同期が生じることを調査した研究報告である。
この研究では、10匹の健康な雄のビーグル犬と人間の実験者が、5日間にわたって社会的交流を行った。交流中、両者の脳波を16チャンネルの無線EEG装置を用いて同時に記録した。その結果、犬と人間の間に神経活動の同期、特に前頭葉と頭頂葉の領域で強い同期が観察された。
興味深いことに、アイコンタクトの際には前頭葉で、触れ合い(なでる行為)の際には頭頂葉で、より強い同期が見られた。これは、前頭葉が視覚/顔の手掛かりの処理に、頭頂葉が体性感覚の処理に関与しているという、これらの脳領域の機能的特性と一致している。
さらに、この神経活動の同期は5日間の交流を重ねるにつれて強まっていった。1日目にはほとんど同期が見られなかったが、5日目には顕著な同期が観察できた。これは、人間と犬の関係が深まるにつれて、神経レベルでの結び付きも強くなることを示唆している。
また、情報の流れに関する分析では、人間から犬への方向性が明らかになった。これは、人間が「リーダー」的役割を、犬が「フォロワー」的役割を担っていることを示唆しており、人間と犬の社会的関係の神経基盤を反映していると考えられる。
研究チームは次に、自閉症スペクトラム障害(ASD)の高リスク遺伝子であるShank3に変異を持つ犬を用いて実験を行った。Shank3変異犬では、健康な犬で見られたような人間との神経活動の同期が失われていた。
また、注意力の指標であるシータ波とベータ波の比率(TBR)を分析したところ、Shank3変異犬では社会的交流中の注意力低下を確認。これらの結果は、ASD患者で見られる社会的相互作用の障害と類似しており、Shank3変異犬がASDの有効なモデル動物となる可能性を示している。
さらに興味深いことに、幻覚剤として知られるLSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)を単回投与することで、Shank3変異犬と人間の間の神経活動同期が大幅に向上し、注意力も改善された。この結果は、LSDがASDの社会的障害を改善する可能性を示唆している。
Source and Image Credits: Wei Ren, Shan Yu, Kun Guo, Chunming Lu, Yong Q. Zhang. Disrupted Human?Dog Interbrain Neural Coupling in Autism-Associated Shank3 Mutant Dogs.
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