最近のスタートアップ「資金調達後のPRあざとくない?」問題 “界隈”にぎわせたCEOに意見をぶつけた(1/3 ページ)
「最近のスタートアップ、資金調達後のPRあざとくない?」──そう思った記者が、スタートアップCEOに素直に意見をぶつけてみた。
記者という仕事をしていると、日々さまざまなニュースの“ネタ”が舞い込んでくる。すでに大手が報じているもの、まだ誰も見つけていないもの、あまり面白くないものと種々だが、最近よく見かけるのは“あざといもの”だ。
メディアやSNS受けを狙ったものと言い換えてもいい。あえて過激なことや奇特な発言をし、SNSで注目を集める。数字が集まるとメディアが注目するので取材に来る。取材の場で詳しい情報を出し、さらに耳目を集める──そういう“メディアとの共犯関係”を狙った話題のことだ。
これを、資金調達直後のスタートアップでよく見かけるようになった。確かに合理的だ。大きなニュースがあったタイミングで、noteなりオウンドメディアで過激な発言をする。そこで注目を集め、起業家や投資家の間で話題を起こす。そうするとメディアが寄ってくるので、そこで発信し、一般向けにも話題にする。掲載実績もバッチリ、広告費も浮く。
最近だと、飲食店向けのモバイルオーダーサービスなどを手掛けるダイニー(東京都港区)が目立った。同社の山田真央CEOは9月、74億6000万円の資金調達を発表すると同時に、自身のnoteで「『1塁打』を狙う日本のVCに、存在価値はあるのだろうか?」というタイトルの記事を公開した。
内容は目先の数字を追う国内のVC(ベンチャーキャピタル)やスタートアップエコシステムを批判するもの。併せて、同社が外食産業向けサービスに取り組む理由などを紹介していた。
ダイニーによる9月の資金調達は、海外のVCからのみの調達だったこともあり、投資家や起業家など“スタートアップ界隈”はしばらくこの話題で持ち切りに。SNSでもさまざまな議論の火種になった。
生き馬の目を抜くスタートアップ業界において、使えるものは使うべきという考えは当たり前だろう。とはいえ過激な情報発信は、転じて周囲の不信感や嫌悪感も買いかねない。ある意味でリスキーで覚悟がいるやり方だと思うし、同じく情報の発信者として思うことがないでもない。
そこで今回は、ここまで話したような情報発信の背景や戦略について、スタートアップに直接意見や疑問をぶつけてみた。相手は先述したダイニー山田CEOと、同社広報の根岸紗菜さん。全て素直に答えてもらえたわけではないだろうが、その回答からはスタートアップによるクレバーな広報戦略の一端がうかがえた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
河野太郎氏に、スタートアップ著名起業家が直談判 newmo青柳氏、SmartHR創業者宮田氏らとの対談、河野氏は何を答えたか
総裁選にも出馬する河野太郎デジタル大臣が、ライドシェアスタートアップnewmoの青柳直樹代表、SmartHR創業者で株式報酬SaaSを手掛けるNStockの宮田昇始代表らと対談。要望ぶつけるスタートアップに何を答えたか。
フリルがメルカリに負けた本当の理由 スマートバンクCEO堀井翔太氏が語る「エグい学び」の先
「発明したやつではなく勝ったやつが正しいと再認識した」──日本初のフリマアプリ「フリル」を立ち上げた堀井翔太氏は、ライバル企業との競争を経て得た教訓をこう語る。フリマアプリ市場での競争で得た“学び”の先、スタートアップ成功への洞察とは。
Finatext林CEOの“スタートアップぶっちゃけトーク”さく裂 ITmedia NEWSが初の読者交流イベント、現地の活気は
ITmedia NEWS初の読者交流イベント、現地の活気は。編集部がレポートする。
パートナーが産後うつに──上場金融ベンチャーCEOが語る、スタートアップ経営と家庭の両立
スタートアップ経営者が、自らの過去の失敗を語る本企画。2021年12月に東証マザーズ上場を果たしたFinatextホールディングス(HD)の林良太CEOが話した失敗とは。
