スタートした「マイナ保険証」一本化 そのメリットと懸念点を整理する:小寺信良のIT大作戦(4/4 ページ)
12月2日から、健康保険証の新規発行が停止され、本格的にマイナンバーカードと一体化した保険証、いわゆる「マイナ保険証」が基本となる仕組みが動き始めた。現場では混乱も見られるが、一体どういったメリットがあるのだろうか。
多くの人の懸念は?
マイナ保険証は、単純な保険加入情報だけでなく、医療情報も一括で扱えるところにメリットがある。その一方で、いくら相手が医療機関とはいえ、自分の医療情報が毎度毎度丸投げされるのはどうなのか、といった不安は残る。医療従事者がその情報を悪用しない保証がどこにあるのか、あまりにも性善説に基づきすぎてはいないか、という点は気になるところだ。
一方多くの人が不安視しているのは、あまりにも多くの情報がマイナンバーにひも付けされているというところだろう。今後は運転免許証との統合も進むし、上記のような救急搬送のことを考えると常時持ち歩いた方がいいのだろうが、もしこのカードが人手に渡り悪用されたら、かなりの個人情報が抜かれる事になる。
そもそも券面上にも、名前、住所、生年月日、性別と、個人情報基本4情報がばっちり記載されている。次期カードには性別は記載しないというが、名前をみればだいたい想像できるだろう。
また再発行には必ず市区町村窓口で手続きする必要があり、再発行には最短でも5日程度かかるという、重たい処理が必要なのも懸念される。
加えて現行のマイナンバーカードには、4つの暗証番号が設定されている。署名用電子証明書用、利用者証明用電子証明書用、住民基本台帳用、券面事項入力補助用だ。後ろ3つは同じ暗証番号でも構わないとされているので、最低でも2つ、最高4つの暗証番号を使い分けることになる。
逆に暗証番号を忘れてしまったら、必要な手続きができなかったり、自分の情報にアクセスできなかったりといった事が起こる。特に利用者証明用電子証明書用は、コンビニで住民票を取ったり、マイナポータルにアクセスするときなど頻繁に使用するが、3回連続で間違うとパスワードがロックされる。いったんロックされると、その解除にはやはり市区町村などの窓口に出向き、ロック解除と初期化の申請が必要になる。
セキュリティがガチガチゆえに全体像が分かりにくく、いったん失敗するとかなり面倒というシステムだ。そういうものにどんどん個人情報が集約されていくと、最終的には自分の手に負えないものになるのではないか。そうした漠然とした不安を抱える人も少なくない。
そもそもこのITの時代に、いつまで物理カードを持ち歩く必要があるのか。マイナンバーの仕組み自体は許せても、4桁の暗証番号程度でアクセスできてしまうカードが許せないのだという人も、実は多いかもしれない。
現在スマートフォンのロック解除はほとんど生体認証で行われているが、これで何か問題があったかというと、まあないこともないがそれほどザルというわけでもなく、そこそこうまく回っている。
物理カードに4桁暗証番号運用は、さすがにもう時代遅れなのではないか、という気がする。
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