「文学フリマ」の盛況を支える“KDP出版”とは? リスクを抑えながら自費出版する仕組みと楽しみ:分かりにくいけれど面白いモノたち(5/7 ページ)
文学作品の展示即売会「文学フリマ東京」が、39回目にして、ついに東京ビッグサイトでの開催となった。大盛況の内に終了したのだが、私にはこのイベントが、新しい電子出版の最前線のように見えた。
デジタル入稿でも最終的には紙になるし、紙の種類、印刷の具合など、店によって違う。せっかく「モノ」としての本を作るなら、そういう部分もしっかり自分で選びたいではないか。その意味では、これは「コピー本」でいきたいとか、今回の筆者のように」「文庫で作りたい」といったわがままが通せるのも自主出版の魅力なのだ。
本の価格は、印刷コストや送料から考えればいいのだけど、今回、文学フリマを、自分のブースを友人に任せて、客としてもぐるぐる回ってみたところ、ある程度、皆さん、しっかりした価格設定をしていた。印刷代が1冊あたり300円だったとして、なら500円でいいや、ではなく、この本なら1000円出してほしい、1500円の価値があるといった値付けをするべきだと、筆者も思う。それは、儲けたいというより、「本」の値段は、そのくらいでないといけないと思うからだ。
それこそ、150ページくらいあれば、1冊10ドル、まあ1500円くらいが、自主製作本の相場になればと思っている。実際、会場を見て回っても、コピー本なら500円前後、製本されたものなら700円〜1200円くらいが相場になっていると感じた。そして、その値段で、ちゃんと売れている。そこも素晴らしい。
本が出来たら、次は宣伝である。ただ、文学フリマに持っていって、ブースに並べれば売れるというなら苦労はないが、とにかく、沢山のブースが並び、沢山の本が売られているわけで、やはり事前に知ってもらうのは、とても重要。もっとも、案外、通りすがりの方が買ってくださるケースも多くて、そこも文学フリマの面白さなのだけど、それに頼っていては、せっかく作った本が見逃されてしまう。
Webカタログへの登録は重要
宣伝の最初は、文学フリマの公式サイトで用意されているWebカタログへの登録だろう。ブースの説明などは、出展申請時に書いたものが既にカタログに登録されている。ただ、そこには150文字しか書けないので、実際の本の宣伝は、別途、登録する必要がある。
本の情報については、長い文章が書けるし、表紙や中身などの写真も掲載できる。そこに、しっかりと書いておくだけでも、何人かの方がしっかりチェックしてくれたりするのだ。
このWebカタログがよくできている。文学フリマに行く前に、このカタログをチェックしておくだけで、自分が欲しい本が見つかる可能性をぐっと高めてくれるように作られているのだ。
まず、ブースが細かいカテゴリーに分けられているので、そこで、ユーザーは興味のあるカテゴリーのブースを見ていくことになる。このカテゴリーが一つあたり多くても300ブースくらいなので、ざっくりと見ながら、興味を引く本やブースがあれば「気になる」ボタンをチェックしていく。
一通り見終わったら、チェックしたブースだけを表示させたり、それらをリストにして印刷したりできるのだ。もちろん、ブース名やキーワードでの検索も可能。SNSで流れてきた気になるブースも検索してチェックすれば、簡単にリストアップできる。事前に、リストを作って持っていけば、欲しい本の買い逃しも少なくなるし、ブース番号などを覚えておく必要もない。
実際、会場ではスマホに表示させたリストを見ながら歩いている人がとても多く、筆者のブースでも、面識がない方々が、「あ、これこれ」という感じで本を手に取って、しばらく中身を確認したら「一冊ください」と買っていってくださった。
明らかに、カタログで知って、狙ってきて頂いたのだと思う。つまりカタログに詳しく、魅力的に情報を書いておくことは、宣伝としてとても有効。この仕組み自体、よく考えられていると思う。デジタル時代の集客ツールとして、「ギフトショー」などの大規模展示会に見習ってほしい。
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