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“日本型ライドシェア”の実態とは ドライバーに聞く「ぶっちゃけ割に合う仕事?」走るガジェット「Tesla」に乗ってます(2/3 ページ)

2024年4月から日本型ライドシェアが始まりました。今回は、東京においてTesla Model 3でライドシェアドライバーとして働いている山野晃弘さんを紹介します。ライドシェアの実際やModel 3での業務の様子などを取材しました。

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タクシー会社のドル箱である羽田空港での営業は禁止

 山野さんの自宅は千葉県木更津市です。週3〜4日実施している業務の始まりは、朝6時頃自宅を出て東京湾アクアラインを経由し、環状8号線と第1京浜道路の交差点あたりを目指します。環状8号線の内側が業務エリアです。

 日本型ライドシェアの場合、地域毎に業務可能な曜日や時間枠が規定されており、山野さんは、基本的に平日の午前7時から11時の枠で乗務します。7時までにコンビニ等でトイレを済ませ、スマートフォンを利用してアルコールチェックや出勤報告を行い業務開始です。

 たいてい、7時15分〜30分くらいの間に専用アプリに配車の連絡が入ります。山野さんの場合、その時間帯は大田区あたりから都心に向かって出勤する顧客を乗せることが多いといいます。


ライドシェアドライバー専用アプリを使い配車の連絡を受ける

 出勤組の時間帯が終わると、次は都心の繁華街に向かう湾岸エリアや大崎・品川あたりのタワーマンションの乗客を乗せることが多いそうです。そして、規定に従い午前11時に業務を終了します。

 ライドシェアでは通常のタクシーの様に流しで乗客を拾うことは許されていません。全て配車アプリ経由の割当のみです。「おそらくスマホをお持ちではないのでしょう。移動中、交差点などで、明らかにタクシーを拾おうとしている老人に遭遇することもありますが、ルール上、乗せることはできません」(山野さん)と表情を曇らせます。

 また、環状8号線と第1京浜道路の交差点で業務を開始するのであれば、羽田空港にはタクシーを使いたい顧客がたくさんいるように思うのですが、「現状、羽田空港への配車はライドシェアには認められていません。乗客が目的地に羽田空港を指定すれば向かうことは可能ですが、空港で乗客を乗せることはできません」(山野さん)と明かします。タクシー業界からすると、空港のような需要の多いところは、既得権を死守したいのでしょう。

 既得権という部分でいうと、乗客との会話の中で面白い気付きもあるといいます。アプリで配車を依頼した乗客には、周辺を走行するタクシー車両の情報がマップ上に示されます。乗客からすると、ライドシェアを含め最も近い場所を走行するタクシーが配車されると考えるのが普通です。


配車アプリの画面。周辺のタクシー車両が表示されている。「ライドシェアドライバー稼働中」とあるが乗客はライドシェアを指定できない

 しかし、わざわざ遠いところに位置する車両がやって来ることが珍しくないというのです。乗客には、タクシーを呼ぶまでは配車される車両がライドシェアのものか一般のタクシーかは分かりません。このことから、山野さんは次のように類推します。

 「効率性を考えAIを使って配車していることになっていますが、実際にはタクシー会社の配車担当による恣意性が入ってるのではないでしょうか。乗客が配車を依頼した時点で、タクシー会社側には目的地が分かるわけですから、遠方地など条件の良い案件を通常のタクシーに割当てることもできます」

 これはあくまでも山野さんの推測なので、真実は分かりません。しかし、業界の既得権を脅かされまいとする日本版ライドシェア導入の経緯などを鑑みると、自社で正規雇用するドライバーに有利な案件を割り当てたいという意識が働いても不思議ではありません。

運行に必要なエネルギーの8割は太陽光でまかなう

 Model 3であることのメリットについて聞きました。まず、気になるのはエネルギーコストです。1日に約200km程度走行するそうですが、山野さんは、自宅に太陽光パネルとTeslaのパワーウォールを導入しています。


自宅横の作業場屋根に太陽光パネルを設置している。Teslaのパワーウォールと合わせて総額700万円以上かかったというが、補助金が出るので実質250万円程度で設置した

 そのため、「晴れが続けば、ソーラーパワーによる蓄電分だけで事足りますが、曇天や雨天ともなると電力量が足りません。電力会社の電気で充電する必要があります。全体として、ライドシェア業務に必要なエネルギーの7〜8割程度は自給自足しているイメージです」(山野さん)。


Teslaのパワーウォール。晴れていると、太陽光パネルで発電した電気をそのままModel 3に充電することができる

 タクシー利用者は、Tesla Model 3のことをどう見ているのでしょうか。アプリでタクシーを呼んだ際、配車車両が決定した時点で。ライドシェアであること、車両がTeslaであることが分かるそうです。

 「Teslaが来るって言うんでワクワクしてました」「前から乗ってみたかったんです」といって話しかけてくる人がいるそうです。中には、オートパイロットを見たいという要望もあるそうで、見せてあげると喜んでくれるそうです。山野さんは大画面のタッチスクリーンはタクシー向きだと力説します。

 「麻布台ヒルズのような大規模商業施設には複数のエントランスがあります。大画面で衛星写真を拡大表示してあげれば、希望するエントラスに迷うことなく乗り入れることができます」(山野さん)

 その一方で困ることもあるそうです。乗り降りのしやすさという視点で見ると、Model 3の後席はタクシー向きではありません。特に、初めての人は、あの、特殊なハンドルによるドアの開け方に悩みます。

 「開け方が分からない人がほとんどです。自動ドアではないので、降りていって開けてあげる必要がありちょっと不便です。Model Xなら運転席からボタン1つで開けることができるし、そもそもファルコンウイングドアは、かっこいいですよね」と山野さんは笑います。

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