「44歳」と「60歳」の2段階で人の老化は一気に加速 米スタンフォード大学などが24年8月に研究報告:ちょっと昔のInnovative Tech
米スタンフォード大学などに所属する研究者らは、加齢に伴う分子レベルの変化を調査した研究報告を2024年8月に発表した。
ちょっと昔のInnovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。通常は新規性の高い科学論文を解説しているが、ここでは番外編として“ちょっと昔”に発表された個性的な科学論文を取り上げる。
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米スタンフォード大学などに所属する研究者らが2024年8月に発表した論文「Nonlinear dynamics of multi-omics profiles during human aging」は、加齢に伴う分子レベルの変化を調査した研究報告である。
研究チームは、人間の加齢現象を分子レベルで解明するため、25〜75歳までの108人を対象とした追跡調査を行った。この研究では、参加者から定期的に血液、便、皮膚、口腔、鼻腔などのサンプルを採取することで、計13万5239種類の生体分子・微生物データを収集・分析した。
最長で6.8年間(平均1.7年間)にわたる追跡調査の結果、加齢に伴う分子変化の約81%がゆっくりと変化が進むのではなく、特に44歳と60歳付近で顕著な変化が起きることを発見した。
44歳付近では、心血管疾患リスクの増加、脂質代謝の変化やアルコールの代謝能力の低下を観察できた。60歳付近では、炭水化物代謝の変化、免疫システムの機能低下、心血管疾患リスクの増加、腎臓機能の低下、糖尿病リスクの上昇に関連する分子変化が顕著となった。
研究チームは皮膚や筋肉の安定性に関連する分子も分析。これらの変化が44歳と60歳の両方の時期で加速すると分かった。また、カフェインの代謝能力についても、44歳と60歳の両方の時期で低下することが判明した。
Source and Image Credits: Shen, X., Wang, C., Zhou, X. et al. Nonlinear dynamics of multi-omics profiles during human aging. Nat Aging 4, 1619-1634(2024). https://doi.org/10.1038/s43587-024-00692-2
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