「シンプルなカードケース」は“キャッシュレス時代のお財布”になれるか?:分かりにくいけれど面白いモノたち(3/5 ページ)
バリューイノベーションの「abrAsus(アブラサス) シンプルなカードケース」のルックスは、その名の通りシンプルとしか言いようがない。実は出し入れのしやすさを考え抜いた商品だった。
扇状に開くとカードを取り出しやすい
「カードをケースの中で扇状に開くというアイデアは、最初はなかったんです。いろいろと検証していった結果、この形になりました。私は、商品を作る際に、他社の商品も含め、様々な商品の内容物や指の”動き”を観察します。今回の場合は、スタッフや関係者の他社製カードケースを見せてもらい、それを出したり、入れたりする際の動画を撮らせていただいて、繰り返し、どういう指の動きで、カードを取り出しているかを観察しました。カードを重ねて収納するタイプのカードケースでは、2枚目以降のカードを見て取り出す際に、必ずカードをスライドする動作が入ります。色々なスライドのパターンを検証した結果、トランプでババ抜きをする時や、銀行員がお札を広げるように、扇形に開く方法が、スライドが簡単で、見やすく、カードも取り出しやすいことに気づきました」と南さん。
この話でも分かる通り、製品化されてしまうとなんということもないアイデアに見えるかもしれないが、カードケースに、この使い方を組み込もうというのは、そうそう思いつくものではない。
しかも、このアイデアは、バリューイノベーション製品の一方のテーマでもある「ミニマム」という姿勢には反しているように見える。ケースの幅にゆとりを持たせ、ケースの中でカードを探しやすくするというアイデアは、結果的にカードケースのサイズを大きくするし、収納時には、そのゆとり部分が無駄に見えてしまう。ミニマム至上主義だと思いつきにくいと思うのだ。
「いろいろなミニマリストの方の本を読んだり、SNSを見る機会があるのですが、やりすぎやネタでやっている方が多いと感じることが多々あります。私自身は基本、便利や使いやすさが先に来て、その手段としてミニマムなプロダクトになることが多いです。ミニマムがゴールなら、ケースは要らないという結果になるでしょう。今回も、軽くシンプルで、使いやすいということがメインで、その結果として、ミニマムなプロダクトになったと考えます」と南さん。
この、「便利や使いやすさが先に来て、その手段」の一つにミニマムがあるという柔軟さが、バリューイノベーション製品の良さなのだ。
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