“晩酌程度”の少量のお酒でも睡眠の質が下がる――アルコールが睡眠に与える影響を調査 豪州チームが発表:Innovative Tech
オーストラリアン・カソリック大学などに所属する研究者らは、健康な成人における飲酒が睡眠に与える影響を詳しく分析した研究報告を発表した。研究では、飲酒が睡眠に与える影響について27の研究を分析した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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オーストラリアン・カソリック大学などに所属する研究者らが発表した論文「The effect of alcohol on subsequent sleep in healthy adults: A systematic review and meta-analysis」は、健康な成人における飲酒が睡眠に与える影響を詳しく分析した研究報告である。研究では、飲酒が睡眠に与える影響について27の研究を分析した。
分析の結果、少量の飲酒でも睡眠に影響を及ぼすことが明らかになった。体重1kg当たり0.50g以下という少量のアルコールでも、レム睡眠の開始が遅れ、その持続時間が短くなることが判明した。
一方、アルコールには入眠を促進する効果もあることも確認できた。ただし、この効果が現れるのは体重1kg当たり0.85g以上という比較的多量の飲酒の場合である。このような量では、確かに寝つきは良くなるものの、その後のレム睡眠が著しく阻害される。つまり、睡眠導入剤としてアルコールを使用することは、睡眠の質を大きく低下させる可能性が高い。
興味深いことに、総睡眠時間や睡眠効率、夜中の目覚めについては、一貫した影響を特定することができなかった。これらの指標については研究によって結果にばらつきが大きく、アルコールの明確な影響を結論付けることは困難であった。
研究の限界として、ほとんどの実験が就寝3時間以内の飲酒を対象としていることが挙げられる。そのため、それより前の時間帯での飲酒が睡眠に与える影響については、十分なデータが得られていない。また、男女差による影響についても、データが限られているため明確な結論を導き出すことができなかった。
実践的な示唆として、良質な睡眠を得るためには、少量の飲酒であっても注意が必要であることが明らかになった。特にレム睡眠への悪影響は、飲酒量が増えるほど顕著になる。睡眠導入剤としてアルコールを使用することは、一時的な入眠効果よりも、睡眠全体への悪影響の方が大きいと考えられる。
Source and Image Credits: Carissa Gardiner, Jonathon Weakley, Louise M. Burke, Gregory D. Roach, Charli Sargent, Nirav Maniar, Minh Huynh, Dean J. Miller, Andrew Townshend, Shona L. Halson, The effect of alcohol on subsequent sleep in healthy adults: A systematic review and meta-analysis, Sleep Medicine Reviews, Volume 80, 2025, 102030, ISSN 1087-0792, https://doi.org/10.1016/j.smrv.2024.102030.
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