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東大・松尾研の留学生に医療費“不正取得”疑惑 SNSで物議に 事実関係を松尾教授に聞いた(1/2 ページ)

「保険の不正利用は許せない」――AI研究で知られる松尾・岩澤研究室(東京大学)の留学生が医療費を不正取得したとの疑惑がX上に流れ、物議を醸している。事実なのか、松尾豊教授に話を聞いた。

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 「保険の不正利用は許せない」――AI研究で知られる松尾・岩澤研究室(東京大学)の留学生が医療費を不正取得したとの疑惑がX上に流れ、物議を醸している。


東京大学(写真:ゲッティイメージズ)

 波紋を広げているのは、2月上旬にあるXユーザーが投稿した一連のポストだ。そのポストは、松尾研に所属する中国人留学生の女性が「留学生として入院したらわずか1年で日本で1300万円の医療費をだまし取った」と、日本をあざける表現を交えて中国のSNS「小紅書」(RED)に投稿した――と主張。添付された写真には、2023年11月から24年10月までに総医療費が約1326万円かかり、そのうち約58万円を自己負担したと読み取れる明細書が写っていた。

 一連のポストが拡散された結果、X上では「保険の不正利用は許せない」「大学・研究室はどう説明するのか」などの批判が続出。一部では「保険料を払っているなら問題ないのでは」と擁護する声も上がるなど、さまざまな投稿が飛び交う事態になった。

 さらに中国発の生成AI「DeepSeek」の性能や、利用に関する懸念が話題になった時期とも重なったことから、「(留学生によって)AI技術も中国に盗まれるのでは」といった懸念も飛び出すなど、医療費の不正取得疑惑にとどまらず、地政学リスクの面からも批判の声が上がった。

 一方、拡散されたポストとスクリーンショットにはおかしな点もある。明細書から読み取れるのは、医療費には総額1300万円かかっているものの自己負担として58万円払っていることであり、「だまし取る」という表現は微妙だ。スクリーンショットにある中国語ともニュアンスは微妙に異なる。

 果たしてこの投稿は事実なのか。松尾豊教授に話を聞いた。

「こういった投稿はしていない」

――医療費の不正取得は実際にあったのでしょうか。

松尾 広がってすぐ、彼女から連絡と謝罪がありました。「騒動になってすみません。ただ、こういう投稿はしていないです」と。


松尾豊教授

――どういうことでしょうか。

松尾 彼女に見せてもらったオリジナルの投稿では、「留学1年の医療費が1300万円 1年間入院していたため」(原文:留学一年医疗费1300w円 因为住了一年的院)と記載されていました。オリジナルの中国語版には大泣きしている絵文字が付いていて、彼女としては「1年間入院してこんなことになってしまって辛い」という意味だったそうです。

 ところが、X上で広まった投稿(※)では、「净赚」「八嘎币」といった箇所や、続く1文も変えられていました。その結果、「1年留学して1300万円稼いだ」と変わっているのです。つまり画像が改ざんされて拡散されたということになります。

※Xで拡散された文面は「留学一年净赚1300w八嘎币 只要住一年的院就好了」

元の投稿(左)、元の投稿の日本語訳(中央)、改ざん後の投稿(右)

――現時点(取材日は2月7日)で、Xで広まっている投稿は中国SNS上で確認できないものの、留学生のものとされるアカウントネーム「橘猫巻巻」のユーザーを確認できます。これは本人のものでしょうか。

松尾 もともとは「橘猫巻巻」というアカウントネームで(留学生本人が)やっていましたが、炎上後、アカウントをプライベート、Xの“鍵アカウント”のようなものにしました。それでもDMが多く来るのでアカウント名を変更し、現在は削除していると聞いています。

――「橘猫巻巻」というユーザー名で本人になりすましたアカウントが表現を変えてREDに投稿したものがXで拡散されたのか、それとも本人の投稿のスクリーンショットが改変されてXに流されたのか、現時点で何か把握されていますか?

松尾 なりすましか画像を変えたのかは分かりません。

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