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ソニーもBD生産終了、近づく“テレビ保存文化”の終焉 「残し続けたい」を阻む大きな壁とは小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)

2025年2月にソニーがBlu-ray Discの生産を終了した。国内シェア第2位、およそ3割を占めるソニーの撤退で、ディスクの供給はほぼ台湾メーカー頼みとなった。そういう台湾も、地元の需要があるわけではない。テレビを録画して保存するという文化が存在するのは、ほぼ日本だけだからだ。

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終わりが近づくBlu-rayレコーダー

 VHSデッキの終焉(しゅうえん)が懸念されたのと同様、Blu-rayレコーダーの終焉も近づいている。ディスクメディア製造撤退だけでなく、いわゆる黒物家電メーカーとしても、もはやレコーダーは主力商品ではなくなっている。

 JEITA(電子情報技術産業協会)が公開している国内出荷統計を見ると、BDレコーダーとプレーヤーの個別集計が始まった09年から11年までにレコーダーは急速な勢いで普及したことが分かる。当時は3Dブームが爆発したこともあるので、11年の突出した数値は特殊なものと考えるべきだ。


BDレコーダー/ブレーヤーの出荷台数推移(JEITA公開資料から筆者作成)

 12年から17年までは、多少の上下はあるもの需要は安定していた。16年から2年間の盛り上がりは、4Kが記録できるUltra HD Blu-ray規格対応モデルが登場したからだろう。だがこれは、テレビ放送側がBS・CS放送しかないことから、それほど起爆しなかった。そもそもBlu-rayディスクに4Kが録画できることをご存じない方も多いだろう。

 それ以降は前年割れを続けており、24年はついに大台とも言える100万台を下回った。

 一方プレーヤーは、レコーダーに比べれば破格に数が少なく変動もあまりないが、これも16年以降は下降線をたどり、24年はついに30万台を切ることとなった。

 Blu-rayにはリージョンコードが設定されており、日本は南北アメリカや韓国、台湾と同じAグループだが、中国はCグループである。プレーヤーなんか中国から並行輸入でいくらでも買えるだろというものでもなく、日本向けに作られてものでなければ再生できない。

 ここまでBlu-rayが下火になったのは、多くのコンテンツがネット経由で配信されるようになり、テレビ一強時代が終わったからである。しかしテレビでしか見られないコンテンツ、例えばテレビタレントやドラマ俳優の推し活などは、テレビ頼みであることに変わりはない。

 仮に今使っているレコーダーから新機種に買い換えたいと思うなら、HDDに録画したデータを何らかの形で取り出す必要がある。その一番簡単な方法が、Blu-rayディスクに焼くことであり、この機能なしに長期間の保存は不可能だ。

 だがそうして救出したコンテンツも、長くは持たない。再生機がなくなるのが早いか、ディスクがダメになるのが早いか、VHS2025年問題と同じことが起こる。さらにVHSよりも悪いのは、これらのディスクにはDRM(CPRM)がかかっており、ダビングしたりリッピングしてデータを取り出したりすることができないことである。

 技術的にDRMを回避することが可能であっても、保護技術を回避した時点で著作権法違反となる。あなたの大事なライブラリは、そのディスクが最後であり、それ以上残す手段はない。

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