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不動産業界向けSaaSベンダー・イタンジ経営陣の愛読書は? “本棚”をのぞき見IT経営者の本棚(3/3 ページ)

今をときめくIT・Web関連企業の経営者の本棚や愛読書をのぞき見。現代社会で戦うIT経営者たちがどんな考え方に影響を受けているのか、ヒントを探る。今回は、不動産DXを手掛けるスタートアップ・イタンジ経営層の本棚や愛読書をのぞき見る。

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中村友拓執行役員の本棚

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中村執行役員の本棚・愛読書

読んでいる本についての全体的な傾向

 大きく分けて2つの傾向があります。1つ目は、取り組んでいる主題のコンテクストを特定するために読書。主題の定義にあたって、主題そのものに加えてその「補集合=何でないか」を明らかにするため抽象度を上げたり、原理原則を学んで全体像を把握したりする目的で読みます。

 2つ目は、好奇心を動機とする、代理体験によって自己理解を深め、未知の分野の見識を広めるための読書。その時々の関心で幅広く読みます。

印象に残っている本

 1つ目は「あなたの人生の物語」(テッド・チャン著)。言語学における「サピア・ウォーフ仮説」(編集注:ある言語を母語とする人の思考はその言語に影響されるとする考え方)と変分原理を、SF的エスプリで融合させた短編です。

 「未来に起こる出来事を回想する」という発想を軸に、学際的な知識を一本筋の通ったストーリーにまとめ上げる手腕で一気に読まされました。この短篇を挙げた理由として、読み味の奇抜さと裏腹に普遍的テーマとしての「人生の意味」に気付きを与える点があります。

 時間軸を捨象した思考様式を獲得することによって、人間が生きる一瞬一瞬そのものに価値付ける、ニーチェの永劫回帰思想に通ずるポジティブな諦観・逆説的な生の肯定に、人生観に少なからぬ影響を受けました。また、自分自身に子供が生まれ、親になってからまた読み味が変わりました。

 2つ目は「ニコマコス倫理学」(アリストテレス著)です。アラン、ヒルティから椎名林檎に至るまで、遍く人類の関心領域である「幸福論」の源流で、2000年の時を経て今読むとコンプライアンス的になかなか攻めた表現もありますが、それでもなお今も読む価値があると思います。

 幸福とは人間それぞれが持つ固有の能力を発揮する状態であり、スペクトルの中でバランスをとって正しい状態であり続ける、という本来的な意味での「中庸」の実現によって達成されるということが、さまざまな角度で分析的に書かれています。幸福への唯一の道は、不断の努力にあると背筋を正されます。

プロフィール

 早稲田大学文学部卒。卒業後、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社、PwCコンサルティング合同会社を経て、2018年に株式会社GAテクノロジーズに入社。イタンジ出向後、電子契約システムの企画・開発など多数主力プロジェクトの責任者を歴任、現在は賃貸管理システムの企画・開発・エンタープライズ導入などを主導。2023年11月、執行役員に就任。


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