オンラインカジノに「ブロッキング」が有効ではないと考える“3つの理由”:小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)
芸能人によるオンラインカジノ賭博問題が話題となり、日本からの利用が違法であることが広く認知された。しかし一般人への捜査も継続中で、政府は依存症対策を進めている。総務省ではブロッキング等の対応を検討する会議が開催された。筆者も参考人として参加したので、検討会で報告されたデータをもと、オンラインカジノの問題点を整理する。
オンラインカジノに「ブロッキング」が有効ではない3つの理由
総務省の検討会では、オンラインカジノに対してブロッキングするべきかということも含めた検討が行われている。
過去ブロッキングが実施されたのは、11年の児童ポルノ規制に関わるものだけで、18年に海賊版サイトである「漫画村」らに対しての実施が検討されたが、その前に漫画村が閉鎖されたため、実施されなかった。
そもそも国や政府がISPに対してブロッキングを指示することは、憲法に規定された「通信の秘密」や「検閲の禁止」に抵触する。児童ポルノの時には、人権保護のための緊急避難措置であるという立て付けで憲法違反を回避した。
漫画村の際は、政府が指示するのではなくISP事業者が自主的にやります、という立て付けにすることで憲法違反を回避しようとした。しかしそんなマヤカシが通用するとは思えず、裁判すればおそらく国が負ける。また全てのISPが自主的に実行するとも思えないので、実施したって穴だらけである。
オンラインカジノに対して、緊急避難が使えるかどうかは多分に政治判断であり、筆者には判断できない。またISPが自主的に、という立て付けも、ISPやブロッキングリストを提供する団体が裁判によって違法行為となる可能性があることから、積極的にやる方向にはないだろう。
しかしこうした立て付けの問題とはまた別に、ブロッキングが有効でないと思われる3つの理由がある。
1つ目は、2011年からずっと児童ポルノに関してはブロッキングをやり続けているが、それに効果があったのか誰も観測していないということだ。そもそも何をどう測定すれば効果ありと判定できるのか、その条件すら定かでない。つまりこっちから一方的にのぞけないようにフタをしただけなので、フタの向こう側でそれが効いてるのかどうか、分からないのである。
2つ目の理由は、ブロッキングを実施すると、それを回避するためにミラーサイトが山のように発生して、究極のモグラたたき状態になるということだ。ミラーサイトが林立すればそれだけアクセスもまた容易になってしまうので、抑制するつもりが、かえって逆効果になりかねない。
3つ目の理由は、ブロッキングに対しての回避方法がすでに研究され尽くしているという事である。ブロッキングは今から15年も前に実施されたもので、方法論も変わっていない。このため、VPNを使って回避できることは、ちょっとネットワークに詳しい人なら知るところとなっている。
自分でオンラインカジノにつながるVPNを探すのは面倒だが、今はSNSなどで簡単に情報が手に入る。またほとんどのオンラインカジノはアプリ化しており、アプリにVPN機能を持たせることで、利用者は何も考えずにブロッキングを回避できる状況になるという最悪のシナリオを、軽視すべきではない。
つまり憲法違反を覚悟でエイヤッと実施しても、効いてない、あるいはさらに状況が悪くなった、ということになり得る。それよりも上記にまとめたように、サイトの作りや表示、広告が問題だらけであり、まずはそこからガンガンに対策を打つという、政府の強い姿勢をオンラインカジノ運営者に見せるべきである。
特に景品表示法は、サイト運営者が日本企業でなくても、日本語で日本人向けに運用していれば適用できるという、強い法律である。サイトに対しての利用契約が無効化できれば、負けても資金回収はできない。日本人をいくら相手にしてもお金が入ってこないという仕組みを徹底することだ。
恐らく25年度内には、オンラインカジノ関連の対策がまとまるだろう。各省庁も懸命にやっているところだが、懸念すべきはあまりにもメディアがこの問題に対して無関心ということである。第2回の検討会も、オンラインでは多少居たのかもしれないが、会場での取材傍聴はゼロだ。これはあんまりだろう。
筆者は今後も引き続き、この問題と検討会の内容を取材していきたい。
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