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ブラックホールが「宇宙に空いた穴」「何でも吸い込む」は誤解 意外と知らない“5つの真実”(1/3 ページ)

「ブラックホール」という単語を知らないという人はほとんどいないでしょう。それほどまでにブラックホールの知名度は高いですが、その分だけ生じる誤解もたくさんあります。今回はその中でも代表的なものを紹介します。

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 「ブラックホール」という単語を知らないという人はほとんどいないでしょう。それほどまでにブラックホールの知名度は高いですが、その分だけ生じる誤解もたくさんあります。誤解は非常に多数あり、中には専門知識が必要なものも多いため、ここでは全てを取り上げることはしませんが、今回はその中でも代表的なものを紹介します。

誤解1:「ブラックホールは時空 (宇宙) に空いた穴や渦である」の真実


ブラックホールは時空に空いた穴ではない?(画像作成:編集部)

 「ブラックホールは時空に空いた穴だ」──確かに専門家でも、そんな表現を使うことはあります。しかし、これはあくまで比喩的な表現であることに注意しなければなりません。

 ブラックホールの構造は非常にシンプルであり、中心部にブラックホールの全質量が詰まった「特異点」と、それを囲む「事象の地平面」しかありません。詳しくは後述しますが、事象の地平面は膜や霧のような物質的なものではなく、どんなに近くで見ても、表面を表すようなものは何もありません。

 このため、ブラックホールは時空に空いた穴や渦ではなく、それどころか通常の意味での“天体”でもありません。どちらかといえばブラックホールは、時空における特別な性質を持つ領域であると考えた方が正確です。

 例えば、ブラックホールの内部に入り込んだものが決して外に出られないというのは、空間が時間のように一方通行の性質を示すからです。ブラックホールの内部とは、時空がそのような性質を示す特別な領域だといえます。

 二度と抜け出すことができない、無限に引き延ばされた時空であるブラックホールの性質を指して、時に「時空に空いた穴」と比喩することが、この誤解の原因だと考えることもできます。

誤解2:「ブラックホールを見ることはできない」の真実


イベントホライズンテレスコープが撮影したM87の中心にある超大質量ブラックホール(Image Credit: Event Horizon Telescope Collaboration)

 「ブラックホールを見る」というのが“特異点や事象の地平面からの直接的な放射を観測すること”という意味として言うのならば、このイメージはほぼ正しいです (ブラックホールの熱力学的な放射である「ホーキング放射」は弱すぎるため、当面の間は無視できます)。

 しかし、通常の文脈ではブラックホールの存在を観測できるかどうかを指して「ブラックホールを見る」と言います。その方法はいくつか存在します。

 最も有名で伝統的な方法としては、強いX線や電波などの電磁波放射を観測することです。確かに、ブラックホールそのものは放射をしませんが、ブラックホールが引き寄せた大量の物質 (大抵はガスやちり) があれば話は別です。

 ブラックホールの周りでは、ブラックホールに落下しようとする物質が寄り集まり、圧縮や摩擦によってX線や電波などの電磁波が放射されます。もちろん、電磁波放射は他の天体からもありますが、放射の強度や放射された領域の大きさから、ブラックホールかそれ以外かの天体を区別できます。

 また、十分に大きなブラックホールの場合には、ブラックホールの周りで発生する放射を厳密にマッピングすることで、ブラックホールの影を撮影できます。これが初めて行われたのは、世界中の電波望遠鏡の観測データをつなぎ合わせる「イベントホライズンテレスコープ 」(EHT)であり、おとめ座にある銀河「M87」の中心部にある超大質量ブラックホールを2017年4月に観測、19年4月10日にその写真を公開しました。

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