災害対応から有事まで――「Japan Drone 2025」で見た国内ドローン産業のいま(2/4 ページ)
6月に開催された「Japan Drone 2025」では、災害対応を軸とした技術革新が際立った。除雪ドローンやVTOL機の進歩、海外勢との競争激化など、ドローンが社会インフラとして定着する中で浮き彫りになった日本の現状と課題を現地レポートで解説する。
有事に備え、長距離飛べる「VTOL」とは
このように災害など有事の「広域調査」を念頭に置くと、VTOL(固定翼ドローン)の重要性がお分かりいただけるだろう。VTOLとは、「Vertical Take-Off and Landing aircraft」の略で、滑走路を使わないで垂直離着陸と長距離飛行が特長だ。
今回特に注目を集めた1社が、空解(QU-KAI)。主力製品「QUKAI MEGA FUSION 3.5」は海上保安庁でも活用された。ちなみに同社のコアメンバーはラジコン飛行機エアロバティック競技で世界トップクラスの実力派。20年以上、「機体の軽さ」と「飛行安定性」を追求してきたノウハウをバックボーンに新規事業を立ち上げた。今回はハードウェアにとどまらずFUSIONフライトシミュレーターも紹介しており、普及の後押しになりそうだ。
このほかにもVTOL機はさまざまあったが、エアロセンスは新型の災害対策用VTOLの試作機「AS-H1」を発表。経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)に採択されて開発中だという。
ドローン技術が「除雪ドローン」に変身
雪国でひらめいた、エバーブルーテクノロジーズの「除雪ドローン」も目立った。同社はもともと、風力を利用して航行するという超エコな「帆船型水上ドローン」の開発を手掛ける。この技術を、陸上の困りごと解決に転用した。例えば夜の駐車場などの無人エリアで、自動航行で雪かきをし続ける。積もってから除雪ではなく、「そもそも積もらせなければいいんじゃない?」という真逆の発想だ。24年1月より販売開始し、25年6月からはレンタルも開始。自宅の玄関からでも出し入れして使えるよう小型にこだわったというが、利用者アンケートでは「意外と力がある」と好評だという。
とはいえ小型だと、広いエリアには向かなそうだが、ドローンには「群制御」という技術がある。ドローンショーなどはまさにそれだが、同社では複数台の除雪ドローンの協調動作で効率的な除雪作業を可能にするべく技術開発中だという。空港など広い場所での活用も視野に入れる。
そうした場合、通信確保や、障害物回避、乗っ取りなど、別の課題も出てくるだろうが、すでにある技術を組み合わせて新しい用途に活用していく発想こそイノベーションだ。GMOがサイバーセキュリティ、NTTドコモが上空LTE通信における「パケット優先制御」や「閉域接続プラン」などを紹介しており、心強く感じた。
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